彼が眠りについてから毎日欠かさず通い、何を出来るわけでもなくても顔を見に行っていた絵理沙。
それが半年も続けば看護師たちの噂のネタにもなり、例の冷凍保存の彼の恋人だとヒソヒソ囁かれていた。
そんな日々の中、妻と恋人未満という立場の違いはあれど、大切な人がコールドスリープしているという共通点で仲良くなったのが木根淵善の妻だった。

身重の妻こそより辛いだろうし、絵理沙も理解し切れない辛さを慮るが、彼女は気丈に振舞い、我が子を数年間も抱っこできないことが可哀想だと夫を気遣った。
だから目を覚ました時のために、我が子記録をたくさん撮っておくつもりだと笑顔で語る。
そんな彼女を見ていると、絵理沙も同じ待つ側の家族として勇気づけられた。
そうして自分から彼の家族だと自然と言葉に出る辺り、絵理沙はお腹の大きな彼女に未来の自分を重ねて見ていたのかも知れなかった。

そうして待つだけの日々に、少しの彩を加えて過ごしていた絵理沙。
医学に打ち込み、彼のお見舞いをする毎日。
やがてその年の終わりが近づいてきた頃、前々から言い寄ってくる前田先輩がまた近づいてきたある日、ついにそれが起こったのだった。
今日もぶつぶつ研究について考えていた絵理沙に声をかけた眼鏡の優男前田。
色々忙しく飛び回っている前田は改めて絵理沙に言い寄り、俺なんてどうかな?みたいな感じで口説いたのだが、この時はもう体がかなり蝕まれていた。
前田と付き合えば医学者としてメリットがあるが、絵理沙はそんなものにはほだされず気持ちを優先し、尊敬では越えられない好きな人がいるのだときっぱり断った。

その相手はもちろん、前田も知っていた。
だからこそ、好きな人が何年も健気に待ち続けるのが我慢できず、自分を強引に売り込もうと肩を強く掴んだ。
それでシャツがずれ、ブラと谷間がチラリして絵理沙が叫べば、サッと離れる理性はちゃんと保っていた。

その一瞬熱くなったせいなのか、前田は自分の愚行を認めて立ち上がり、頭を冷やしに行こうとしたのだが叶わず、激しい咳と共に顔色がみるみる青くなっていった。
そして大量に吐血してしまうのだった。
咳に誘発されて吐き散らされる夥しい血液。
絵理沙も青くなって驚愕しているうちに、前田は倒れてしまった。

治療の甲斐なく前田は数日後に帰らぬ人となった。
絵理沙はMKウイルスパンデミック初期、罹患者が発症した瞬間すぐ傍にいたのだった。
感想
終末のハーレム72話73話でした。
スパイは旅の途中で急遽仲間に加わったビンビンが明らかに怪しいですが、絵理沙の行動が真実なら謎が増えるばかりですね。
女性の絵理沙がMKウイルスには蝕まれていないとして、では何のための注射なのか?
https://www.kuroneko0920.com/archives/65330

































