屋根の上から警戒をし続けていたエルフは、彼が普通に村人たちと話しているのを聞き、歌との違いに釈然としない気持ちがこみ上げた。
やはり本人を知らなければ、妬み嫉みの対象にされるのはむべならかることだった。
重傷者の治療が終わったところで、彼が女神官に葬式の指示を出した直後、生き残りの一匹が命からがら逃げだした。
エルフの見立て通り、これで合計20匹になるので納得した彼は、エルフにあの矢を投げ渡して任せた。
しっかり受け取ったエルフは指示通りに肩口に突き刺して致命傷を避け、あえて棲み処に帰らせたのだった。

襲撃に来た20匹は先遣隊であり、広場に集めたのも本隊が略奪しに来るまでの段取りだと考えた彼は、術の使用回数が回復次第、追撃するつもりだった。
そして女神官は、犠牲者たちに地母神の祈りを捧げた。
村で一晩の宿を借りることになったその夜、またしんしんと雪が降り始めた。
そんな中、湯気が上がる温泉露天風呂で一日の疲れを癒していた女神官。

一緒に湯に浸かることにしたのはエルフのみだったが、彼女は温泉初体験で、数種の精霊が混ざり合う異様な場所になかなか踏み出せない。
女神官の蕩けるような表情も、簡単に安心できる材料ではないようだった。

それでもそうと決めれば思い切りのいいエルフはマナーも何もなく、えいっと飛び込みお尻で飛沫を巻き上げた。
一旦入ってしまえば芯から温まってくる心地に蕩け、二人の間に笑顔の花が咲いた。
共に夜空を見上げながら、彼が鎧兜をつけながら入るのか、泥浴びの方がいいと断るリザードマン、酒に勝る回復はないというドワーフ。
そんな男たちを話のネタにし、旅の垢を落としていく。

彼は疲れ知らずなように活き活きと見張りについているが、エルフはゴブリンばかりの彼の人生が心配になってきた。
只人の女神官では想像もつかない年月を生きられるエルフ。
数千年の生において、森に居続けてもやることは際限なくあり退屈しなくても、外の世界に飛び出すきっかけになったのは、たった一枚の葉っぱだった。
子供が笹船を流すように追いかけたエルフが最後に見た葉っぱの運命は、図らずも只人が作った人工物に行く手を遮られた姿だった。
ある一節を諳んじたエルフは、たった100年ほどで死にゆく只人との違いに思いを馳せた。
そして女神官は、エルフの美しさが羨ましいものであることを教えてあげた。
するとエルフも、エルフも只人も互いにないものねだりをするものなんだろうと返した。
美しい月が煌々と雪原を照らしていた。
十分に温まった二人は、色々な部分でのままならなさに火照った体が湯冷めするのも構わず、ゆっくりと時を過ごした。

感想
ゴブリンスレイヤー41話42話でした。
女神官が正面切ってゴブリンと対峙するとは思いませんでしたが、彼が信頼していっている証でもあるのでしょう。
果たして、今回のゴブリンには導く混沌の勢力がいるのかどうか、令嬢は無事でいるのか。
https://www.kuroneko0920.com/archives/66529
https://www.kuroneko0920.com/archives/19491


































