85話
イザナミに囲まれながらも命からがら逃走に成功したクロエ。
しかし、蔑んでいた日本人にしてやられた失態はあまりに屈辱で、拳が壊れる勢いで木を殴りつけた。
男嫌いどころか、人種差別もガンガンにする差別主義者だった。

一方、安全を確保した怜人一行は火野の治療を始めていたが、まともな医療器具もない状態でできるのは傷口を押さえて血を止めようとするのが関の山。
しかしそんなことをしても、左胸を撃たれた重傷がどうにかなることもなく、みるみる血圧が下がって火野の顔が青ざめていく。
とは言え、大して心配もしていない面々もいて、ハーレム王を目指す翔太はもちろん、木根淵は覚醒中、出芽は訳知り顔で残すは金のみと微笑む。
そんなことよりも出芽がカレンに話しを振ると、彼女はいつものウザ高いテンションである時は美少女担当官、ある時は辣腕民生長官とノリノリでヒーローの如く自己紹介し始める。
そしてUWの凶行を撮れた勢いのまま映像監督だと名乗るが出芽がスルーするものだから、悪い顔で東京の情勢も計画通りだと伝えた。

聞くことを聞けた出芽は、最早火野の生死がどうなろうと知ったこっちゃないらしく、村人を伴って帰り始めた。
まさに嵐の如く現れて去っていったイザナミ陣営。
彼女たちをここまで連れてきたのは何を隠そう、翔太の一番のお気に入りの東堂の成果だった。

火野を心配するのは本当にそれなりに付き合いがある者だけで、カレンはUWの悪事を暴くのに彼の死は最高のエッセンスだと感じ、本当に監督の顔で喜んだ。
火野の出血は止まらず、いよいよ死が間近に迫っていた。
ナースの朱音も匙を投げてしまってもうできることはなく、ゆかりは泣き叫んで死を遠ざけようとする。
しかし、最早ここまでだと受け入れた本人は希望を遺してくれた彼女に穏やかに話しかけ、考えていた我が子の名前を伝えて微笑んだ。
だからこそ、幸せ絶頂からすぐの退場は受け入れ難く、我が子の成長を何も見届けられない人生を嘆いた。

それでも唯一の男友達を呼び、我が子とゆかりのことを頼んだ。
彼も友との別れを覚悟しながらも生きる希望を与えるような返事をするが、本人はもう軽口で答える余裕はない。
そして、今まで愛し合って来た女性たちの名前を一人ずつ呼んでいく。
ただヤった順番通り思い出せず、寧々子の偉大さを思い知ると共に、彼女たちの未来も心配になった。

そんな最期まで気のいい奴のまま火野は逝ってしまうのだった。



































