53話
雪山の戦いの最高潮は、彼とゴブリン聖騎士の再戦なのは言わずもがな。
聖騎士の鋭い突きをいなした彼は、すかさずカウンターの突きを返すが、聖騎士も見切っているとばかりにいなし返し、的確な剣技を見せつける。
ゴブリン聖騎士は明らかに剣術を知っていた。

聖騎士はあえて他のゴブリンの手出しを許さず、歓声を煽って殺し合いを盛り上げさせるが、勝敗がどうなろうが最後には一斉に襲いかかってくるのは明白。
彼は構わず目の前の聖騎士に集中して、うまく雪も使って相手のペースを崩し、思いのほか早々に首筋を一突きしようとした。
するとギャラリーのゴブリンが彼の背後から矢を放って邪魔をした。
するとエルフが無作法ものの狂乱ゴブリンを投石で黙らせ、彼は再び聖騎士に集中できた。

彼はあえて四分の一ほど切れ飛んだ盾で防御の構えを取った。
聖騎士はすかさず盾ごと彼を串刺しにしようと渾身の突きを繰り出した。
腕を切り裂かれながらも真正面から受けた彼は、そのまま兜まで斬られて肩を突き刺されたが、そこまで深く入り込ませるのが狙いだった。

聖騎士が引き抜く前に捻って令嬢の剣を奪い返すと、言葉が通じなくても最後に教えてやった。
ゴブリンは愚かでも間抜けではない。
しかしお前は間抜けだと。

兜の下の光る眼に恐怖しながら喉を切り裂かれた聖騎士は、止まらない血に衝撃を受け、口に逆流してくる吐血でどうにもならず、侘しい断末魔を漏らして雪原を赤く染めて倒れたのだった。
すると観戦していたゴブリンたちが一斉に躍りかかった。
さすがにもう満身創痍の彼は令嬢に撃てと合図した。
令嬢が詠唱を初めて放った稲妻は、ゴブリンの中心ではなく遥か向こうの山腹にぶち当たった。

ひび割れる雪原、不気味な地鳴り。
彼の狙いは雪崩という自然の驚異で、ゴブリンを労せず全滅させることだった。
もちろん彼らも巻き込まれてしまう位置にいたが、そこで奇跡を残している女神官の出番がきた。
自分の後ろに仲間たちを誘導した女神官は、ここだと信じて聖壁を発動。
地母神の奇跡は凄まじい自然の驚異を二手に分けてくれる。
しかし一番遠くにいた彼は聖壁の後ろに間に合わず、白煙の中に消えていくのだった。




































