54話
女神官の聖壁のおかげで彼らは雪崩に巻き込まれずに済んだ。
間に合わなかった彼の姿は消え、下方に流されたと思われる。
しかし焦るのは令嬢ばかりでエルフも誰も、どうせ無事でいるだろうと感じている様子。
もちろん心配していない訳ではなく、それでも彼だからなんとかしているだろうという気持ちでいれたのだ。

周りが信じて歩き出しても、令嬢はここまでの全て、自分の我がままで起こった事態だと考えずにはいられず、彼が雪に埋もれ、砦の侵入作戦も台無しにし、4人も死ぬことはなかったはずだと責め苛む。
始まりは、冒険者になってしまったこと。
そうして自分の愚かさを呪ったが、進めた足が埋もれていた彼に当たり、それで彼が起き上がって出てきた。

あわや死にかける目に遭ってもいつも通りの彼は、逆に他メンバーが無事だったことに安堵したようだが、エルフは水辺用の指輪を持ってきた意味に合点がいった。
こうなることさえ想定していた彼の用意周到さは感心するばかりだが、やはり女神官はゴブリンへの情報漏洩だのなんだのより、自分たちが心配することを先に気にするべきだと言い募り、次からはそうするように約束させた。

話がまとまったところで、山の向こうから朝日が昇ってきた。
終わり良ければ全て良しと思える美しい光景は、エルフにこれぞ冒険だと言わしめるもの。
そして彼は聖騎士から奪い返した令嬢の剣を渡し、鞘が流されてしまったからやはり雪崩は失敗だったなと事も無げに告げた。
だから令嬢は大切なそれを胸に抱き、また大粒の涙を零した。

これにていくつもの大冒険をした一年間の締めとなり、生き残った多くの冒険者たちが酒場に集った。
受付嬢の挨拶で新年とこの日を迎えられたことに感謝し、おめでとうの乾杯で宴が始まった。




































