8話
逃げ帰った彼はどれだけ考えても答えが出るはずがなく、改めて自分は演者じゃなく自分の脚本で動かしたいんだと思い、覚悟を強くした。
翌日、課長は相変わらず前野には厳しく当たり散らし、昨夜のことなどおくびにも出さなかったが、彼も今までになく侮蔑の目で睨み返し、嫌悪感を露わにした。
課長がどこまで知っているのか読めず、誰をどうやって脚本に組み込むか情事に使われた資料室で悩んでいると、ばつが悪そうに入ってきた咲坂が昨夜のことについて切り出した。

これも演技の可能性を疑った彼は、お互い大人の関係として口外するつもりはないと安心させつつ、探ってみることにした。
昨夜は喧嘩の流れで仕方なく一旦会社に戻ったらしいと分かると、彼は不倫の罪悪感を突っついてみた。
奥さんについて訊かれた咲坂の反応はさすがに演技とは思えない、愛人の立場に罪悪感を抱いているものだった。

彼はそれも報われぬ恋をしている者同士として共感を示し、咲坂の信頼を得ると共に彼女が何も知らないことを察した。
だから、一先ず咲坂は脚本の登場人物に使わせてもらうことにした。
その夜、ネトラセ契約の条件など無視して絵美奈を公園に呼び出すと、余計な前置きなく服を全部脱いでと指示した。

彼女の戸惑いも無視して、この時間帯にどれくらいの人通りがあるのか伝え、今の内に従わないとあられもない姿を見られるだけだと迫った。
無理だと言っても彼の脚本通りに動いてしまう絵美奈は、スカートを脱ぎボタンを外し、人が通る前に早くコートをと焦り、あっさり乗っかってしまう。

近くの停留所にバスが停まり、降りた乗客が近づいて来る気配がする。
一人の中年サラリーマンがカップルに見える二人をチラ見しただけで通り過ぎていくと、彼は絵美奈に首輪をつけ、夜のお散歩タイムだと告げた。




































