査察官の昇級試験
彼は、今日も今日とて依頼されたゴブリン退治をこなそうとしていた。
依頼された村からほど近い泥炭地帯とねぐらの小屋一つ。
火攻めも有効だろうと思いつつも全滅させるには不確定要素の多さを懸念した彼は、色々な可能性を考えながら結局はシンプルに突っこんで、まず一体を仕留めた。

殺されるのはゴブリンで殺すのは俺。
それは揺るぎない真実であると思い、ぬかるむ足元に注意しながら、増援が出てくるかも気を配り、単純なパワー差でもって無事にこの場にいた奴らを駆逐した。
小屋は荒らされまくっているが、隠れている奴はどこにもいない。
しかし、万が一の討ち漏らしが牧場に向かうかもと嫌な予想が消えない彼は、用心のために夜まで警戒することにして潜んでいると、大きな地震に襲われたのだが、ゴブリンに比べれば気にすることではなかった。

査察官は清々しい朝を迎えられて気分が良かった。
いつもより少し早い起床、よく作れた昼食、ノリが良い化粧、ひと気のないギルドまでの静謐とした道。
気持ち良く仕事を始められた査察官だったが、朝一番でイチャモンを付けてくる冒険者でもない客が一人。

そのクレームに対応していると、待たされてイライラした冒険者と言い争いになり、一触即発の喧嘩が始まるかと思われたその時、力づくで止めに入った巨躯の男が問答無用で二人を放り出した。
融通が利かなそうに見えるクールビューティーな査察官だが、冒険の記録を検めて人の世が平穏になっているのが分かると自然と表情が綻んだ。
だから、滅多なことでは昇級を撥ねることなどないのだが、最初はゴブリン、その次も次も直近までゴブリン退治しかしていない報告書に違和感を覚え、担当官の名前で世話をした後輩の顔を思い出した。

ゴブリン退治に問題はないが、確かめるべきことがあると判断した直後、査察官はよく作れたお弁当を忘れたのを思い出した。
小さな地震を感じ取りながら、戦士は武闘家娘と一緒に先生に読み書きを教わっていた。
どうもジッとして頭を働かせるのが得意じゃない武闘家娘は早くも心折れそうだが、前衛職らしく目に見えない気の世界にはそれなりに精通しているようだった。

そうこうしているうちに買い物から戻ってきたドワーフ娘とエルフはいつも通りにやり合っているが、二人一緒に行動するのも構わないところが微笑ましい。
そこにパーティーを束ねる立場の重戦士が声をかけてくれば、また一悶着起こりそうな話になりかけるが、それを治めるように男装の麗人とばかりに馬車から颯爽と査察官が降りてきた。
彼女の登場に最も緊張したのは、直で指導を受けてきた受付嬢だった。

ゴブリンスレイヤーと呼ばれる冒険者の昇級をすんなり通せないと判断した査察官は、後輩が記した人格面については何ら問題なしと認めたが、単独でゴブリン退治しかしてないとなれば、パーティーを組んで依頼をこなせるのか、他のモンスターも倒せるかなど、確認する必要アリと判断して馳せ参じたのだった。
するとタイミング良く噂の彼が依頼を終えて来たのだが、受付嬢は間違いなく昇級して欲しいあまりに、せめて身綺麗な姿を先輩査察官に見てもらうため、牛飼娘がお世話することを願って明日に出直してもらうことにした。
その期待通り、彼のあまりの汚さを心配した牛飼娘は甲斐甲斐しく彼の世話を焼いた。

翌日、鎧や兜がそれなりに綺麗になったとはいえ、見すぼらしさが消えない彼をねめつけるように観察する査察官。
ゴブリン以外に興味はないと言い切り、昇級審査の仕組みに文句をつける彼。
ともあれ、まだ少年と呼ばれる年齢の彼は特別な試験を受け入れ、査察官に監視されながらの冒険に出発するのだった…

感想
ゴブリンスレイヤー外伝7巻でした。
面白度☆8 愛され度☆8
村の惨劇から5年としても、当時がせいぜい10歳だとしたら彼はやっぱりまだあどけなさが残る少年の年頃だと思うと、改めてかなり荒んだ世界ですね。
査察官も同行するくらいなら腕に覚えがあるんでしょうが、楽しみですね。



































