22話
もう船を海に浮かべた京介は、今更まだ生き残りがいたから連れてきたいと無雲に言われようが、睦美がまだ戻ってないと言われようが、知ったことではなかった。
もはや島の住人を特別視する仲間意識も消え失せ、脱出の直前まで来たからには、何が何でも自分だけでも助かりたいという気持ちに支配されていた。
それはただヤリまくって生きていきたいだけの下総も同じで、京介に言われたら何も疑問を抱かず出港の準備を整え、エンジンをかけるし、自己中が極まっているのは法嘩も同じで、取りあえず葵や無雲を乗せようと急かすのみ。

しかし葵が皆を待つと譲らないのであれば、京介は我慢の限界を超え、船を出させたのだった。
ここまで一緒に行き抜いてきた法嘩はまさか、自分までガン無視で置いて行かれるとは思わず、問答無用で遠くなる船に向かって叫んだ。

そして置いていかれた彼らはヤンマに襲われるが、千歳が伏せて動くなと指示を出したおかげで、誰も掬い上げられずに済んだ。
かつて睦美に教えてもらった知識が、しっかり役に立ったのだ。

だからヤンマの群れは、猛然と海原を走る船を追いかけ始めた。
唸るエンジン音に刺激され、水しぶきを上げて走る船をターゲットに定めたヤンマの群れ。
蟲の習性など知る由もない京介たちは、とにかくスピードで振り切ろうとするが、それは逆効果だった。
ヤンマは時速80㎞を安定して出すことができ、体力消費を抑えられる海面飛行ともなれば漁船が逃げ切ることなど不可能。
無事にドックに辿り着いた睦美もあっさり追いつかれた船をただ眺めるしかできないでいると、全速スピードで走っていた下総は焦って暗礁にぶつかってしまい、焦りながらも座礁しないようにスピードを緩めようとするが、何も分かっていない京介がそれを邪魔する。
そのせいで操舵が乱れた直後、ヤンマに特攻紛いに正面衝突され、ひっくり返された。

脱出の希望が転覆した様を眺め、法嘩の怒りは絶望に変わっていく。
それでも何とか脱出した二人が海面に出た直後、京介はまた自分だけ助かればいいという思いで、また海中に潜り、同じタイミングで浮上した下総はヤンマに捕まえられた。
そして呼吸しにまた浮上した京介は、頭上でバラバラに引き裂かれる下総の最期を見上げたのだった。

辺り一帯、まさに血の海になった。
やがて陽が落ちてすっかり暗くなった頃、お通夜のようになっていたドックに京介が戻ってきた。
一目見るなり無雲はまた怒号を放って制裁を加えてやろとするが、それより速く法嘩がぶん殴り、逆に止める側になるしかなくなった。
もう誰の信用もなくなり、仲間意識も自ら捨て、寛大だった葵にさえ軽蔑された京介。

あれだけイキり倒していた京介が誰よりも小さい人間だと分かっても、しかし睦美だけはヤンマを倒す策を考えていた。
感想
大巨蟲列島21話22話でした。
本当に一番のクズは長生きしますね。
下総の最期は、過去最高レベルの豪快さだったと思います。
https://www.kuroneko0920.com/archives/79051









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