223話
碇マンの戦車砲は容赦なく、紗月が乗るオープンカーも宙を舞った。
当然、戦闘力は皆無な紗月も一緒に宙を舞い、走馬灯のように過去の感情と光景が蘇りながら重力のままに地面に近づいていき、そのまま叩きつけられた。

エリックはこれ以上の無駄な殺戮はするなと碇マンに指示し、逃げ道を塞いで進化情報の収集を優先させた。
黒い泥からしっかり形を現したエリックも惨状の中に突っ込みつつ、轟がどう動くかも注視する。
そしてまるでレスキュー隊のように生存者はいるかと叫び、トラックが無惨に転がっている中、下半身が切れ飛びながらもまだ息がある者がいた。
エリックはそんな虫の息の人間たちにまとわりつくと、勇敢な者たちよと賛美しながらもまだ生きられるような希望を与え、内に秘めた欲望を表層に浮き上がらせたタイミングで進化情報を掠め取っていく。

大怪我を負いながらもまだ生きている紗月は、自分個人には何も力がない他力本願能力に秀でた人間だと卑下する思いがこみ上げながら、僅かな意識不明から回復した。
そんな少女を守ろうと何十人の隊員たちが囲み、盾になってでも守ろうとするが、紗月はそんな状況と彼らの行動を好意的に思えなかった。
それは一人では何もできないという、劣等感から来る考え方だった。

奇跡を期待されている、相手の弱みを把握する能力に長けた平凡な美少女。
世界を導く少女なら、絶体絶命さえ切り抜けられるという無茶振り。
そうこうしているうち、また新たに生まれた変異体が何体も現れ、戦力差だけが大きくなっていく。
紗月は頭から流血しながら何も言わず、無力さを詫びた。
その視線の先には山田の傍らで咽び泣いている関がいて、仲間の死で悲嘆にくれている。
そんな弱々しい女子大生の頭を掴んだかつての仲間は、ボールでも拾うように持ち上げた。

残酷な光景が奇跡で止められることもなく、関はボールのように地面に叩きつけられて骨が砕ける嫌な音が響き、親友が恋した男の傍で動かなくなった。
紗月はその光景も虚ろに眺めるだけで、どうしようもなかった。

しかし隊員たちの士気は落ちず、銃を構えて戦う気満々だから、何度も理不尽を経験してきて父親を早くに亡くした無常と血の繋がらない母との不和にムカついてきた。
するとさっきまで諦めの境地だったのに、一人でも何物にも屈しない力が欲しくなった。
人智を越えた暴力、不可思議な現象、突然の自然災害。
そんな受け入れるしかなさそうな対象に抗える進化情報を得られるなら、晴輝への恋が叶わなくてもいいとさえ思い、怒りと切望に叫んだのだった。




































