229話
ながみんは綺麗にスッパリ切り裂かれ、中途半端な位置で上下に別れた。
凄まじい血飛沫、一瞬で生気が消えた顔。

それはながみんが感じ取った不安が紗月に流れ込んだもので、実際は攻撃さえ食らっていなかった。
強くなったからこそこのままでは切り裂かれるイメージができたながみん。
弱点を突いた一撃必殺の技をもう盗まれたことも悟り、殺されたイメージができたのならそれはもう敗北で、ながみんは圧倒的にデカい何かに追い詰められた猫のような唸り声をあげるしかできなくなった。

次の瞬間、侍進化体が仕掛けると猫のようなすばしっこさで躱しまくるが、ながみんはもう反撃する余裕がなく、ジリ貧の未来しか見えなくなった。
神城は急激な体調悪化の理由を敵の攻撃以上に、脳が悲鳴を上げているのだと分かった。
人間をやめた化物じみた生物になってまで強くなっても、肉体の強化に脳が追いついていないアンバランスさでいつか神城という人間の意識も消えるだろうと予想できても、ここで芋を引ける理由にはならない。

更なる進化を経た明石の一撃を躱した山田は、大木を避けつつ反撃を放った。
明石の進化は攻防一体に特化しており、大木を斬り倒す破壊力と体毛を伸縮自在に伸ばす機動力に変え、意地でも山田には殺されない形態を取り続けた。

それでも山田は、どれだけ上回ってこようとしても必ず殺してやると誓った。
同じ思いの関は道路に転がっている車両からアイテムを拝借し、森の中へ駆け戻った。
ついさっきまでは明石にはどんな状態でも生きていて欲しいと思っていたが、轟に虫けらのように殺され、死後の感覚を体験した今、早く殺してあげねばと思った。

人生は光る一本の道。
死ぬと光がすっぱり途切れてそこまでになり、暗闇が広がるだけで様々な負の感情がこみ上げてくるが、振り返れば生きた証の光る道が遥か彼方まで続いているので、ここで途切れることで自分の物語は完結する、それは全生物に共通するのだと悟ると、恐怖はなかった。
だから死よりも恐ろしいのは自分でなくなってまで望まない生を続けることだと分かり、明石の物語をできるだけ早く完結させなければと思えた。

そのための攻撃は原始的ながらも攻撃力抜群の火矢だった。
火炎放射器の燃料を染み込ませた一射なら、体毛だらけの身体は瞬時に炎に包まれたが、明石は炎に包まれても耐えきったのだった。



































