171話
禍々しいオーラを放ち、バレちゃったと悪びれもせず正体を明かした魔女仁科。
怒りを滲ませる彼に騙していたことを責められると、軽くごめんねと謝るものだから、彼は大きな声で理由を問い詰める激情を抑えることができない。
すると仁科はいやらしい笑みを湛えたまま、ここに連れてきたかったからだと単純明快に答えた。

記憶喪失のフリという回りくどいやり方をしたのも、嫉妬深い神が共通の知り合いの金城という男だからで、最初から金城だと分かっていたら彼がはるばるここまで殺しにやって来ないと見抜いていたからだ。
金城とは、元の世界で彼が剣道の試合で一度も勝てなかった目の上のたんこぶ的存在なだけでなく、彼がどれだけ酷いことをされたのかも仁科は幼馴染みとして知っていた。

剣道で勝てないだけじゃなく生理的にも苦手な相手と向い合せるため策を弄した仁科は、自分を恐れているサーニャにも言い含め、一芝居打たせたのだった。
そんなことができるのもサーニャを昔ボコしたことがあるからだが、彼を騙してまで誘導したのは一刻でも早く死ぬべきの金城を唯一殺せる彼に殺して欲しいから。
そうして全てを白状した仁科に改めて殺せるかか訊かれた彼は、そう考えずに無理だと返すから、私はいざとなれば殺せるくせにと皮肉られた。

だから彼はさっき以上に感情が爆発し、逆切れで無理なものは無理だと怒鳴り散らしたのだった。
その激昂に開戦の空気を感じ取ったリーメアリーは、しれッと仁科に斬りかかった。
しかしバリアーに阻まれて弾き返されるも、嫉妬深い金城に死んで欲しいくらいだから仁科は人間には敵対しないよと優しく説明してあげた。
ただ、ハイエルフは別なのでエグイ目つきで見下ろすものだから、ちびりそうなハイランダーは慌てて戦う意思はゼロだと示した。

そして金城を殺せないと怒鳴り散らした彼は、心を落ち着けるために一人の時間を欲し、出ていった。
この世界の住人の寿命を最大二十歳に設定したのが金城という事実に、あいつなら余裕でやるだろうと思えた。
それほど悪人や鬼畜という言葉では形容できない、できるだけ早く死ぬべき存在なのになぜ殺せないのか。

それは金城に母親を殺されたのに、逆らえない相手だからだった。

































