8話
早朝、弟たちを起こした深月はいそいそとここを脱する準備をしながらも、まるで旅行に行くようだと感じ、不安の中に楽しさを感じていた。
すると思った以上に早くエレベーターが下りて来たので火事は大したことなかったのかと思ったが、現れたのは共に避難していていつの間にか消えていた薄気味悪い生存者の一人だった。

ハンマーを持ち、明らかに不穏な空気をまとっている薄汚れた男。
深月は食糧を渡して友好を示しながら、手を伸ばした隙に踵を返して走った。
急いで事務室に逃げ込んだが、扉を塞ごうにも女子一人で大きなものは動かせず、もう覚悟を決めて荷物からナイフを取り出し、悠々と入って来た男に見せつけながら、ここは自由に使っていい自分たちは出ていくと強気な態度で迎える。
しかし男は最初から殺す気満々らしく、まずは弟二人に狙いを定めた。
守ろうとした深月がナイフを振り抜き、男もハンマーを振り回し、最初の一撃は痛み分けとなって構え直したその時、無線から武村の声が聞こえた。
深月は武村に知らせようと走るがハンマーをぶん投げられ蹴り倒され、マウントポジションで殴られて再びハンマーが振りかぶられた。

すると隠れるように言われていた弟たちが男に躍りかかり、ハンマーがそっちに振り抜かれた直後、銃声が轟いた。
駆けつけた武村は男を蹴り飛ばし、銃で脅して足を手錠で拘束するが、弟たちは二人ともかなりの重傷を負わされてしまった。

怒りに駆られた深月は銃を奪い取って男に向けるが、殺意を向けておいて無様に命乞いする男に呆れ返り、武村に宥められると大人しく手を離した。
しかし武村を心から慕っている弟たちを傷つけられた憎しみは、守り切ってくれなかった武村にも向けられた。
混乱の真っただ中にいる深月は酷い言葉に後悔するが、どれだけ理不尽なことを言ったのか理解できる状態ではなかった。

武村も自分の判断を後悔しながら今からどう動くのが最善か考えだしたその時、市役所に集まっている生存者から呼びかける放送がかかった。
市役所に集まっている生存者。
数日後に来るという自衛隊の救出。
とにかくここから脱するため、武村は男にゾンビを集中させ然るべき報いを受けさせたのだった。

































