9話
助かったのは一人だけだった。
男に然るべき報いを受けさせてトラックでスーパーを離れると、寒くなったからかゾンビは屋内に引っ込んでいるようで、程なく市庁舎が見えてきた。
傍を川が流れているせいかゾンビは見当たらず、駐車場や広場もあるので要塞として見晴らしも文句なさそうな建物だった。
避難してくる人間を一応は品定めしている様子からそれなりに組織立って統制されていることを察しつつ、武村は案内に従ってトラックを停め、治安維持という名目を信用して銃を預けた。
そして負傷した隆司の治療のため、医務室に案内されて牧浦と出会った。

取りあえずは今すぐ命が脅かされるほどの負傷ではないようだが、満足な治療機器がないのも確かだった。
家族ごと、または行動を共にするのを世帯として登録される他、いくつか生活上のルールがあったが、救助の情報があるからか、最近避難してきた者たち以外はそこまで悲壮感はなかった。
ともあれやっとゆっくり休める場所を得ることができ、腰を落ち着けた。

気づけば夜を通り越して朝焼けが近づいてくる時間帯。
周りも起き出し始めてざわざわしてきたので、武村がもう起きようとしたその時、深月が誰かに呼ばれた。
それはゾンビパニックが起きた当初、深月と一緒に逃げようとしていた敦史だった。

ただ深月の彼氏と言い張る敦史は、恩人だろうが武村への敵対感情を隠そうともせず、これからは身内として二人の面倒は自分が見るからお役御免だという。
それだけじゃなく、その場にいもしなかったくせに優が殺された責任も武村に押しつけ、身勝手に怒りを滲ませた。
そうして理不尽に憎まれた武村だが、ムカつきながらも一人で優を埋葬すると、楽しませてもらったままマンションに繋いでいる時子も救助される前に解放しなければと考えながら広場を探索し、煙草にむせている牧浦に出会った。

避難者をまとめる組織のお飾り副会長だと謙遜する牧浦とは同年代に見え、偉ぶらないフランクな印象に流された武村は、ここまで一緒だったがもうあの子供の面倒を見る必要はなくなったことを話した。
外科医か内科医か、それとも医療従事者の端くれなのか、とにかくドクター役の牧浦に隆司の今後を任せた武村は、夜になったらマンションに戻ろうと思った。

































