エリートの子種
長い拘置所暮らしの弊害で運動能力が著しく落ちていた真珠の体力の無さで、徒歩だけじゃなく公共交通機関もちょろっと使って、休み休み移動し始めた。
目的の町までえっちらおっちら、途中で喫茶店でも休みつつ、真珠の法律知識の元が何なのか突っ込んでいくアラタ。
法律の間隙を突く作戦は司法浪人だった被害者から仕入れたもので、第一審で黙秘して2年間の無意味に思える時間を過ごしたのもちゃんと意味があった。
カルテの保存期間は5年、場合によって20年保存されるが、誕生日が分からない真珠にとってカルテの破棄を待って2年をやり過ごすのは必須のことだった。

計り知れない狡賢さを小出しにしてくる真珠がケータイを、そして切り刻んだ遺体の一部を隠したのは看護学生時代に少し触れ合った身寄りのないお婆ちゃんのお墓だった。
誰もお参りに来ず、これ以上入る人の無い墓。
骨壺と一緒に確かに袋に入ったケータイと、卓斗の父親である山下の首が雑に詰め込まれていた。

あまりにおぞましい光景だが、これで真珠に近づいた最大の目的に辿り着いたアラタは警察に匿名でも通報すると伝えるが、真珠はブツブツとどこか言いにくそうにダメだという。
それは自分の保身のためではなく、山下と卓斗に血の繋がりがないと本人から教えられていたからだった。
いわゆる托卵、不思議と卓斗に愛情を抱けなかった山下は二人目を望んだができず、自分の身体を調べて作れない体質だと知り、妻の不貞と卓斗との間にある溝の正体に納得したのだった。

だから真珠は同じ墓に入りたくないという山下の望みを叶えたわけで、アラタも卓斗の首探しに悲愴さが感じられない違和感に合点がいった。
感情豊かで、果てしなく計算高い真珠。
子供時代は太ってて、年頃になれば痩せて犯行時にはまたブクブクと太って。
その変化もちゃんと合理的な意味があると分かれば、彼女の異常性が半端じゃないと思い知るだけだった。

環のケータイを手に入れて写真を確認していくにつれ、講師よりも通っていた生徒の可能性が高いかもと感じると、真珠は父親捜しにより生き生きとヤル気になった。
そこでアラタが気になったのは、外に出たらしたかったこととは何か。
それは父親探しではないというし、ここまで色々な秘密を教えてもらった立場として、あわよくば殺人の自白も得ようと強く斬り込んでいく。
しかし真珠の可愛すぎる本音を聞いてしまうと、また底の無い魅力にハマってしまうだけだった。

数々の秘密を暴露したのは良く思われたい乙女心とささやかな承認欲求。
子供時代に認められてこなかったが地頭の良さは相当なもので、それに加えて可愛く照れる様子の破壊力は男が惑わされるに十分な魔力があった。
そしてまた休憩中、写真を確認していた真珠はまさかの核心にアラタを誘い込んだ。
写真に写っている高校受験を控えてるだろう生徒の後ろ姿が、宮前にそっくりだということに。
年齢的にも合致し、手弁当で弁護している奇特さ、桃ちゃんを利用して真珠の父親について探りを入れたことも合わされば、父親の可能性を考えない訳にはいかなくなった。

さっそく宮前に探りを入れつつ会う段取りをつけたのは、もちろん遺伝子情報を手に入れてDNA検査をするため。
アラタが一人で自首して罪を減らす体で呼び出し、しれっと髪の毛でも手に入れるつもりだったが、宮前自身も真珠との血縁の可能性を察していた以上、企みを看破するのは早かった。
二人から問い詰められた宮前は観念し、環と知り合いだったことを白状した。
環と知り合ったのは夜の偶然、中学生かそこらの男子からすれば可愛らしい大人の女性は何とも魅力的で蠱惑的で、当たり前のように惹かれていった。
そんな逢瀬のある夜、環が自殺を図ろうとしているのを止めて励まし、部屋まで送り届けた時に子種を搾り取られたのだった。

環との過去を吐き出したことで、勝手に一人で罪の告白をしたような気になって逆切れでもなく喚き散らす弁護士は、自分の浅はかさよりここ最近の正当性と献身性を挙げつらうが、薄ぺっらい正義感を指摘されるとぐうの音も出なくなる。
宮前が父親かどうかはDNA検査の結果次第だが、どっちだろうがどうでも良くなった真珠はついに、自分をこの世から消すことが産み出したものの責任だと責め立て、告白した。
ついに3人殺したのは自分だと白状した真珠は、宮前が父親ならば死刑が確定したようなものだった…

感想
夏目アラタの結婚9巻でした。
面白度☆9 賢い度☆9
さすがにここで急に第三者が真犯人でしたは興ざめになるでしょうけど、最悪の事実なのはそうですね。
「夏目アラタの結婚」ネタバレ最新10巻。愛してコロした男の妹と対面!ファンキーガールと兄ラブ近親相〇!
































