12話
凛は夢を見た。
学校で男子と喧嘩した日の夢だった。
自分の机にゴミが乗せられているのを見つけて、誰がやったのか全体に聞こえるように聞くと、数人の男子がクスクスと笑い出した。
その瞬間、凜は一目散に向かっていってその男子の机にゴミを乗せ返した。
そして取っ組み合いの喧嘩を始め、先生がやって来るまで派手に暴れまわった。
仲良しの萌愛と帰る道すがら、犯人はあの男子ではなくみーちゃんだと言われてしまう。

しかし、男子と喧嘩してしまったことよりも、みーにやり返せなかったことだけを悔しがった。
親友の萌愛としてもすぐに教えてやりたかったのだが、幼稚園の頃からみーは怖い存在で、彼女に目を付けられるのが怖かった。
それに対し凛は、みーの仕業と知らなかったにも関わらず、偶然今履いている靴はみーのをパクったもので、借りただけだから後でなめくじを入れて返すと言う。
萌愛から見た凜は、まさに怖いもの知らずだった。
それは、彼女が大人と同年代を比べているから取れる行動だった。
その時、つーっと凛の頭から血が流れた。
また母にされたのかと心配する萌愛。
しかし、凛はすぐにそれを否定した。
母は夫からの電話を今か今かと待っていた。
狭いアパートはろくに片付けも掃除もされずに、ゴミ屋敷寸前だった。
首を長くして待っていた夫からの電話に母は飛びついて出たが、彼は凛とだけ食事に行って、母である日美子と弟の俊は留守番だと告げた。
それが日美子を怒らせ、それが凜に向けられる不幸な連鎖が続いていた。
母がやっちゃんと呼んで依存している男の車の音が近づいてくるのが聞こえると、凜は木を伝って外に出て、さもまだ帰っていないかのようにごまかさなければならなかった。
母がまだ凜は帰っていないと嘘を吐いた事を、バレないようにするためだった。
母の再婚相手は、暴力を振るい散財するクズ野郎だった。
少しでもイラっとすると母を蹴り上げ、凜にいやらしく手を伸ばしてくる。

そして凜が抵抗すると手を上げ、その後に父らしさを装って、仲直りのために家族みんなでお風呂に入ろうと提案する。
その日の怯えた俊は、隙をついて外に飛び出していた。
どこに行ったか分からないまま、凜が痣だらけの身体を湯に沈めていた時、線路の傍で弟は幼い命を散らしていた。
その悪夢のような一日を夢に見ていた。
13話
坂本がカーテンを掴みながら雄たけびを上げる声が隣の坂本家まで響き渡り、凜は目を覚ました。
夜になると起こる、発作のようなものだった。
リンゴジュースを持ってきてくれた蜜の目の色が、獲物を狙う狼のようだと思った。
唯一の友達の萌愛が、このマンションに住んでいた。
だから、死んで悲しんでくれるのはきっとその一人だけだと思ったから、凜はここで死のうと思った。
なんで、見ず知らずの会ったばかりの人にこんな話を打ち明けてしまっているのか考えた。
きっとこの女性は、何でも話してしまう魔法をかけた魔女に違いないと思った。
なぜ、あなたは死にたいの?
その問いに、凜は絞り出すように答えた。
「祟り・・・
死んで、祟り殺したい奴がいるの」
直接相手を殺す力がないと分かっているから、仕方なくそんな方法を取るしかなかった。
祟りなんて、この世にないと分かっているのに。

すると、理不尽に抗って生きている斉藤が、生きて幸せになることが一番の復讐だろと、尤もらしい大人の意見を言った。
しかし、凜は敵視したのかプイッと横を向く。
蜜は斉藤を部屋の外に連れ出し、凜の身体に無数の痣があることを話した。
首筋にキスマークがあることも伝えた。
彼は警察に通報するべきだと言うが、蜜に本当に?に訊かれると、正攻法で立ち向かう正しさに疑問を感じざるを得なかった。
また、そうやって彼女に見透かされたような視線を向けられると、以前のように敬語に戻ってしまい、ただ今は妻になった彼女の身体を労わることしかできなくなった。
じゃないと、鈴木先輩に祟られかねないと思ったから。
俊が死んで、葬式を挙げた。
やっちゅんは上辺だけの涙を流し、自分の本当の子供じゃないからと言いつつ、また作ればいいじゃねえか、と鬼畜な言葉を日美子にかけた。
もっと早くから彼は悪魔だと気づいていたのに、そんな言葉をかけられてなお、日美子はまだ依存しようとしていた。
あいつが現れるまでは、父が死んだ後でも幸せに暮らしていた。
だから、幸せをぶち壊したあいつを殺してやると、凜は憎悪を滾らせた顔で告白した。

それを聞いた蜜は、嬉しそうに笑った。
感想
復讐の未亡人2巻でした。
面白度☆6 小出し度☆7
夫婦の夜の営みが小出しなら、蜜の過去も小出しでなかなかに焦らしてくれる2巻でした。
優吾への愛を匂わせながら結婚したことが斉藤への復讐なのかどうか。
復讐相手にも股を開いてきた蜜ですけど、どこまで恨んでいるのか分からないんでなんとも言えないところですね。
さて、他人の復讐に手を貸すのは陽史の役目でしたが、果たして。
https://www.kuroneko0920.com/archives/20893




































