まどかと再会
ゆずからの電話を受けた小春は、身重なんだから無理しないでねと優しく言葉をかけて電話を切った。
とは言え、今日は帰れないと言っていたが、このままジョーのところに行って、ずっと帰ってこないつもりなんじゃないのかと、小春は心配だった。
そんな不安を龍に訊いてみても、彼らの歪な繋がりを知っている龍は、何とも言わずに物憂げな表情で虚空を見つめていた。
東京は六本木。
茨城とは全く景色の違う都会の中の喫茶店で、ゆずは人を待っていた。
伸びた髪を後ろで纏めているまどか。
少し雰囲気が変わったように見えたのは、ゆず自身が変わってしまったからそう見えるだけなのかも知れない。

現嫁と元嫁は再会の挨拶を交わすが、まどかはやつれているゆずの顔を見て、お得意の毒舌を吐き出そうとはしなかった。
「ちょっと痩せたんじゃない?」
とゆずが先に訊く。
まどかは自分の些細な変化より、やつれて髪もメイクもぐちゃぐちゃなのをそのまま伝える。
それにゆずは目を伏せ
「今日は来てくれてありがと」
と、礼を言った。
「私はいずれそうなると思っていた。あなたは伊達家を捨ててジョーのもとに戻るって」
そうまどかは予想していたことを話す。
ゆずは、少し考え込み
「んーー。どうだろ。分かんない」
と、本当にまだ答えを出しあぐねているようだった。

ユラユラと注文したドリンクをかき混ぜていたゆず。
それを見ているうちに急に顔が青ざめていき、いきなり席を立ってトイレに駆け込んだ。
まどかはゆずが頼んだドリンクがレモネードなのに気付くと、自分ができないことを彼女は体験中なのだと知った。

つわりで酷く苦しんでいるゆずを自分の部屋に招いたまどか。
ベッドを貸して、背中をさすり、妊婦のゆずを介抱する。
ゆずはいたたまれない気持ちを抑えて甘え、また素直に礼を言った。
もちろんまどかは快く助けている訳ではなかった。
既に伊達家を捨てているし、その理由が子供を産めないからだと言うのも、ゆずは知っている。
なのに自分を頼るのはおかしいんじゃないかと、そのままをゆずに伝えた。
だがゆずも自分が何をしているか分かっていながら、それでもまどかを頼ったのだ。
まどかはあくまで妊婦を介抱するという意味でだけ、ゆずを助けるつもりでいた。
「落ち着いたら帰って」
と言われるが、ゆずは心の中でそれを断った。

ゆずが少し落ち着いたのを見て、まどかは机に向かって参考書を片手に英語の勉強を始めた。
「今、定時制の高校に通ってて明日テストなの。やりたい仕事があるのよ」
その言葉と姿に、ゆずは感銘を受けた。

女性として辛い経験をしたまどかでも、しっかり前を見て自分で人生を切り拓こうとしている。
なのに自分は、二人の男の間で揺れているだけ。
急におかしくなってきたゆずは声をあげて笑い出した。
そしてまどかと同じく家を出る決意をし、シングルマザーになることを選んだ。



































