初穂は学校で女子からやっかまれていた。
人気のある奥野という男子が彼女にアプローチしているのが気に食わず、父と姓が違うこと、母が不倫相手なこと、父とは血が繋がっていないことまで知っていて、噂の種にしていた。
そうして、偶然見つけた毛虫を体育の授業の時に彼女の制服に置いて様子を観察したが、彼女は憮然としたまま毛虫を素手で掴んで外に出し、誰がやったか分かっているぞと言う風に、字数人の女子を睨みつけた。
一は出かけた先からバスに乗って帰っていた。
その車内で昨日のコンビニの店員の若い女性が声をかけてくれ、席を譲ってもらった。降りる停留所も一緒で、別れ際まで他愛ない話をした。
著者名:松本剛 引用元:ロッタレイン1巻
彼が帰ると、初穂は汚された体操服や制服を洗濯機に入れようとしていた。
彼は彼女に歓迎されていないと分かっているものの、なるべく早く東京に戻るからそれまではできるだけ仲良くしようと歩み寄るが、彼女はそれを拒否した。
父は血の繋がった長男を気にかけ、彼女は血の繋がっていない自分はないがしろにされていくのだと不安を抱き始め、そんなときに心無いいじめをうけて参っていた。
だからか、疎ましい彼に裸を見られようが、この場で下着姿を見られようが構わないとばかりに制服を脱ぎ出し、弟の幸せの邪魔だけはしないでと告げた。
著者名:松本剛 引用元:ロッタレイン1巻
5人になってから初めて海へ遊びにいった。
帰りの車内で後部座席に座った女性二人とまだ子供の澄也は、ぐっすり寝入っていた。彼は父に言われるまま3人の寝顔をカメラで撮ったが、また初穂の艶めかしい唇に見惚れてしまっていた。
後日、一は足を挫いた美子の代わりに初穂の授業参観に顔を出した。
そのせいか、緊張が増した彼女は数学の問題が解けずに恥をかく格好になった。
三者面談も彼が出たが、どうもデリカシーのない担任にイライラし、カッとなりそうになったが、話を断ち切るように「よろしくお願いします」とだけ言って、早々に切り上げさせた。
いつもなら解ける、数学は得意な方だ。彼女はそう言って先に帰った。
彼が家に着くと、彼女の母を呼ぶ声が外まで聞こえてきた。
慌てて彼も家の中に入ると、庭で美子が倒れていてピクリとも動かなかった。
著者名:松本剛 引用元:ロッタレイン1巻
鶏小屋の扉が開け放たれたままで、彼女の傍に取ったばかりの卵が割れずに落ちていた。
大動脈瘤。
普段から血圧が高かったらしい。
父が病院に残り、3人は家に帰った。
安心はできないが今夜は安定するらしいと聞いても初穂の不安は治まらず、母の死を想像して取り乱し涙を流し始めた。
一は思わず抱きしめて、言葉より温もりで落ち着かせようとした。
著者名:松本剛 引用元:ロッタレイン1巻
それで彼女も泣き止んで落ち着きを取り戻したが、彼は自分のした行動でなかなか寝付けなかった。
翌朝、初穂はおにぎりを作り、それを持って3人で病院に行った。
父は頑なに帰ろうとせず、誰がどの具のおにぎりを食べるかで些細なトラブルが起きた直後、美子の意識が戻った。
そろそろ澄也の誕生日が近く、美子は彼のリクエストに応えてカレーライスを作ってあげようと朗らかな笑顔を見せた。
著者名:松本剛 引用元:ロッタレイン1巻
見た目には問題なさそうに子供たちを安心させているが、まだ油断はできない状態だった。
父と初穂が病室にいないタイミングで、一は見舞いにやってきた。
美子は迷惑をかけたことや授業参観のことを謝り、ベッドの上に正座をして続けた。
もし自分に何かあったら、玉井と血の繋がっていないのは初穂だけになる。それをあの子は凄く不安に思っているから、どうか本当の妹だと思ってやって欲しいと頭を下げた。
彼はただ、「はい」としか返せなかった。



































