適当に相槌を打ち、第一段階は問題なく終了した。
お父さんと呼び、お腹空いてない?と訊けば、上機嫌のまま肯定してくる。
どこかに食べに行こうと言われれば、健気で可愛い娘を演じながら、自分が作ると言って順調に事を運んだ。

台所に立ち、手際よく鍋を沸騰させ、包丁で材料を切り刻んでいく。
娘が作った料理を目の前にした彼は、嫌われていたはずの相手からの愛情表現に今更ながらに戸惑い、どうしたんだと訊いた。
その答えも用意してあった。
母が嫉妬しないように、嫌っていたフリをしていたのだと答えると、彼は何も疑わずに妙に大人っぽい考えで気を使っていたらしい相手の連れ子を、笑わずにはいられなかった。
彼はおいしいと言って、胃の中に手料理を流し込んでいった。
それを確認した凛は、お風呂を入れてくると言って立ち上がる。
男はそこでもう父性が消えてしまったのか、一緒に入ろうかなどとのたまった。

凛は蜜が触っていた、あの花が咲く植物が毒草だと教えられていた。
実、種、根、葉それぞれを料理にしても違和感がないメニューまで教えてもらい、それを忠実に再現して家族を壊した悪魔に出したのだ。
花言葉は変装、恐怖、夢の中。

毒が回った悪魔は、自分が散々痛めつけてきた俊の亡霊を見ていた。
23話
俊の亡霊が目の前に現れた悪魔は、壁に背を当てて距離を取った。

自分が殺したと言っても過言ではない子供が生前と変わらない姿で現れ、耳をつんざくような泣き声をあげて何かを訴えている。
しかし、所詮は子供と思ったのか、悪魔は今までと同じように怒号を放つ。
すると、俊も生きていた頃と同じようにビクッと反応し、ピッタリ泣き止んだ。
ただ、頭から夥しい血を流し始めたのを見て、やはりそれは俊の恨みが詰まった復讐の塊なのだと分かった。

父親面をして凛を強引に風呂に連れ込み、散々身体を堪能して金を食い潰した日美子には散らかった部屋を片付けるよう命令し、邪魔でしかない俊には外で遊んで来いと言いつけた。
従うしか選択肢がなかった俊はそして外に出て、何をするともなく暗くなった町をふらつき、線路で光る何かに興味を惹かれて侵入してしまい、そのまま轢かれてこの世を去った。

死して家に戻ってきた俊は大声で姉を呼び、悪魔はそれに恐怖し、亡霊の叫びをかき消そうと意味のない大声をぶつけ始める。
そのタイミングで凛は悪魔に声をかけた。
まだ父を心配する健気な娘を演じ、手を引いて亡霊の声が届かないところまで誘導していく。

外は暗く部屋の中も暗い。
凛は緊迫感を演出するように「はやく、飛んで!」と言った。
言われるがまま飛んだ悪魔は、そのまま地面に落下した。
1階の住人は遅くまで帰ってこない。
庭は手入れもされず雑草が蔓延っている。

発見されにくい状況は整っているし、亡霊に怯え、尋常ではない様子の中年男にどれだけの人間が同情するだろうか。



































