152話
麟を連れて市役所での用事を済ませ、その帰り道でハレ婚祭に参加していた女性を見つけたゆずは、思わず声をかけていた。
ゆずの爆乳より一回りほど大きそうなその女性は安藤真鈴、25歳の若さにして既にそこそこ大きい二児のママだった。
そんな彼女は、見事チャラさナンバー1のスバルの嫁に選ばれていたのだが、あの時の喜びの顔の面影がどこにも見当たらないほど暗く沈んでいた。

公園に寄ってベンチに腰を下ろすと、まりんはゆずに龍之介が優しいかどうか訊いてみた。
ゆずは意地悪なところもあるけど優しいっちゃ優しいと、幸せオーラを滲ませながらのろける。
すると、ずっと地面を見続けていたまりんはそっちにしとけば良かったなんて零し、打ちひしがれたまま涙まで零した。

どうやら沈みきっている理由は、スバルの第一婦人にスバルと血の繋がった待望の第一子が生まれたらしく、まりんの連れ子である二人の子供に見せる顔とは明らかに違っていて、どうしようもないことでもやりきれないようだった。

まりんは鼻を啜り、鞄をごそごそし出したので、ゆずはハンカチをサッと出してあげようと思ったが、まりんは既に辛さを酒でごまかすようにしているらしく、ワンカップを取り出した。
手馴れた様子で蓋をカシュッと開け、昼間の公園の中、近くで我が子が遊んでいるにも関わらず、グイッと喉の奥に流し込んだ。

だからゆずはすぐにお暇しようとしたが、ガッチリ掴まれて酔っ払いの相手をしなければならなくなってしまった。
二本目を空けた頃にはスルメを齧りながら第一婦人への罵声がどんどん酷くなっていた。
外で作った子供に違いないなどと根拠がなさそうなことを吐き出し、赤ちゃんをほったらかして遊び歩いている事にも憤慨していたが、自分の方が抱かれているらしいことはサラッと混ぜていた。
女への愚痴を零しきったのか、今度は足をガバッと開きながら夫への愚痴はささやかに零す。その時ばかりはまだ恋する乙女の面が見えなくもなかった。

ゆずも第一婦人として、小春の心情もまりんとそう違わないのだろうと思っていた。
だから寝たフリをして龍が動くように仕向け、小春を抱かれるような状況を作って、自分が見て見ぬフリをして円満に生活できればいいと考えた。
しかし、そうやって気を使った翌朝、さっそく小春に冷たい態度を取られ、嫉妬の怖さを思い知ったのだった。
どうしたら嫉妬なんてなくなるんだろうね?と言うゆず。
そんなの無理だよ、と返すまりん。

人が感情を持つ限り、まりんの言う通りだった。
するとゆずは急に笑えてきた。
まりんは自分が笑われた気がして殺気立つが、あながち間違いでもなかった。
嫉妬に狂うのは止められない。
どうしようもないことをウダウダ考えていることがバカらしくなり、身も蓋もないことを言いつつ悩む事を止めたゆず。

考えてもしょうがないのはまりんも分かっていて、だから酒でうやむやにする作戦を取っていた。
その時、麟がぐずり出した。
逆にゆずは、嫉妬で荒れながらもしっかりママをして夫を愛しハレ婚を続けているまりんをタフだと評し、ハレ婚なんてタフじゃないとやってられないと返され、それはそうだなと思った。
嫉妬し、優越感を覚え、自己嫌悪に陥っていた小春はキッチンの隅で座り込んでいた。
小春の母はどうせ龍とケンカでもして不貞腐れているんだろうと思っていたが、小春は違うときっぱり言い返した。
何を悩んでいるにせよ、母は早く孫を抱かせて欲しいという。
小春は麟がいるじゃんと答えるが、母にしてみれば、あの子は小春が嫁いだ家に生まれた子供で、やはり本当の孫と思えるものではなかった。

小春が生んだ子供だからこそ孫であり、母はお祖母ちゃんになれるのだ。
小春もそれは理解できた。
麟のママはゆずで、全てをかけて愛せるのもゆずだけだと。
でも、自分が麟のママの一人じゃないと認めればあそこでやっていけないと感じていた。
その時、小ぶりな尻のポケットに挿し込んでいたスマホの着信音が鳴った。
相手はゆずで「なるべく早く帰ってきて!」と、どこか焦ったような様子で開口一番言ってきた。

感想
ハレ婚150話と151話と152話でした。
当然起こるであろうイレギュラーと、女同士の水面下での争いですね。
ゆずは予想通り、小春に気を使ったんですね。でも、そう単純ではなかったと。起こるべくして起きた感情の冷戦か。
https://kuroneko0920.com/archives/39345



































