45話
裏切られたのではなく、最初から計画の一部に組み込まれてハメられていた亡々死。
ユキが鬼だったと分かっても、理解できない点があった。
姫蘭のチェンジが利かなかったのは鬼だったからで説明できるし、助けたのではなく最後に鬼を擦り付けるために手を組んだように見せかけたのも分かる。
しかし、姫蘭のイベントでカードを提示した時、鬼なら被らなければおかしい。
亡々死は泣きじゃくりながら、どんなからくりだったのか問い質した。

最初にジャック、クイーン、キングを引いた者が鬼というルール。
ユキが引いたのはキングだった。
最終的に子になるためには、子とペアを組むのは大前提だと考えた。
そんなゲーム開始の序盤、姫蘭があのイベントをぶち上げた。
子同士で集まって無敵ペアを作り、鬼をあぶり出す方法もある。
都合が良過ぎるイベントにすぐに疑いを持ったが、利用する手も考えつき、すぐにショーコに接触しに行った。
屋上から参加者の動向を把握しようとしているショーコは、それを可能にする驚異的な視力の良さを持ち合わせていた。
ある程度ショーコのことを把握していたユキは、どのカードを引いたのか教えろと持ちかけた。

ショーコはその頼みですぐに姫蘭のイベントはカードの教え合いになるだろうから、そこでカードを使うつもりなのだと見抜いた。
ユキも、全員の動向を確認できる場所に陣取っているショーコがわざわざ鬼がいるかも知れないイベントには参加しないだろうと踏んでいた。
しかし、ショーコはカードを教えるデメリットもないがメリットもないと答えて拒否した。
もちろんユキは交換条件を用意していた。
それは、誰が最後の鬼なのか教えるというものだった。
ショーコはあえてユキの口車に乗り、6を引いたと教えた。
お互い、本当のことを言っているかどうか分からないと勘ぐり合うが、それはあくまで信頼がないこの関係を皮肉るだけの予定調和の探り合いでしかなく、お互いに嘘は言わないと確信もしていた。
そしてユキは、自分が鬼だと白状した。

ショーコもその答えに納得した。
姫蘭のイベントでショーコのカードを提示して子を装い、子とペアを組み、無敵になったフリをし、制限時間ギリギリにでーんする。
そのギリギリを狙うのが危険でもあるが、ギリギリまで鬼で居続けることが逆に安全だと最適解を出していたユキは、必ず成功させるという強い意思を維持し続けたのだった。
亡々死の問いに、そんなショーコとのやり取りを思い出したが、そのからくりを一切説明することなく、ハメられたショックと死が間近に迫って恐怖で泣きじゃくる亡々死を捨て置き、姿を消した。
亡々死は、二度目の裏切りに遭ってひたすら恨み言を叫んだ。

クリア目前にして、現世での希望を膨れ上がらせた。
また漫画で一花咲かせようと、生きる気力に満ちていた。
それがたった今、非情なる裏切りで灰と消えかけている。
人生が打ち切られる恐怖に比べたら、連載終了なんてどれほどのこともなく感じられた。

クロエルに両腕を爆破された姫蘭から逃げ延びたカエデが呼吸を整えていると、りんが一人で佇んでいるのが見えた。
麗奈を助けたりんは、この蹴落とし合いのゲームの中においても優しい人間性を捨てていない麗奈を思い、彼女を助けられたことに満足していた。
目の前からいなくなった麗奈に向けるように、博打に幾度となく命を賭け、博打で数え切れないほど勝ち、博打で財を成したと独りごちる。
全ては、博打で命を賭ける瞬間に得も言われぬ恍惚を感じていたからできたことだった。
しかし、何をどうしようと博打で負けることがなかったせいで、やがて命を賭けた博打でも気持ちよくなれなくなっていった。
だから、このゲームで麗奈を助けてわざと死ねる状況にした。
しかし、テレポしてきたユキが目の前に現れたせいで、またしても命を賭けた博打で負けられそうになかった。

何をせずとも、相手が負けにやって来る。
天命とも言うべき勝ち星の下に生まれたりんはユキにでーんし、鬼を移した。
このタイミングで現れたユキがどんな作戦を取ったのかもすぐ見抜き、そして詰めの甘さに笑いを零す。
慎重を期したユキの作戦でさえ時間配分に隙があると注意し、負け知らずの自分の存在を最後にアピールした。

辺獄でも、現世でも負けられないりんは、物悲しそうに暗い天を仰ぎ、姿を消した。
ユキは想定していなかった事態に何もできず、怒りと驚きで罵りの叫びを上げるしかなかった。
そしてユキの正体に気づいているカエデが、四宮良真の最期を見届けようとしていた。

しかしユキは諦めずに走った。
都合よく近くに子がいる可能性を信じて全速力で走った。
何をしても現世に戻らなければならない理由があった。
難病の妹を助けるため、大金を持ち帰らなければならなかった。
クロエルは無様に走るユキを見下ろして笑う。
雷鳴轟く暗黒の空に浮かんでいるクロエルは、1時間に及ぶ死の鬼ごっこのカウントダウンを始めた。
5、4、3、2、1・・・
勝ち上がりが確定している者は、ここまでのそれぞれの戦いに思いを馳せながら固唾を呑んで待つ。
両腕を吹き飛ばされて尚、姫蘭は生きる可能性を捨てていない。
裏切りに次ぐ裏切りに遭った亡々死は、ひたすら泣き叫んでいる。

カウント0。
鬼ごっこは終了した。
理屈では説明できない圧倒的強者の存在に足元を掬われたユキは鬼のまま終了を迎え、膝をついた。
































