20話
二十歳のクリスマスイブによしのは婚約した。
人間界の婚姻届を役所に提出した帰り、イルミネーションに彩られた街はカップルで溢れていた。

改めて思う。
小さい頃から大怪我をしてもおかしくない事態になっても不思議と奇跡が起きて助かり、子供ながらに何かに守られていると信じていた。
乙女心に思うのは天使や守護霊。
そうじゃなく悪魔だと知った。
その悪魔は、13歳の夏に利害関係の一致で契約を交わした悪魔で、やがて愛するようになり、ついに結婚した。
本物の夫婦になった最初のクリスマスは、部屋でケーキを食べながら一人で過ごした。
自撮りしても甘いケーキを口に入れても心は満たされなかった。
お正月はちゃんとお雑煮を作って食べた。
立派な門松や手の込んだお節料理が懐かしかったが、まだそこまでできる技術はない。
ついでにお雑煮も、ベリアルが作ったのと比べると、とても美味しいとは言えない出来だった。

すぐに成人式の日もやって来た。
華やかな振袖を着て式場に行くと、以前結婚式に招待してくれた友人がいて、出席したことに改めてお礼を言ってくれる。
その子のお腹は、もうすぐ新しい命が生まれるので大きくなっていた。
幸せいっぱいそうな友達に、あのイケメン保護者は来てないの?と訊かれると、寂しさを隠しきれなかった。

辛い時間は長く感じると言うが、ベリアルがいない時間はとても早く過ぎていった。
あっという間に街がバレンタイン一色の景色に変わると、手作りチョコだといって渡したのを、ただ溶かして固め直しただけだと、身も蓋もないことを言われたのを思い出す。
その時、普通の女の子ならドン引きして100年の恋も冷めるような要望を言っていたのも思い出し、今になってみればそれも幸せな日常だったと感じる。

思い出が心を癒してくれるのは一瞬で、すぐ空しさに襲われる。
季節の移り変わりはあまりに早く、日中が暖かくなってくると桜が咲き始めた。
一人暮らしに変わってからも美大生としての日常は恙無く過ぎ、課題に家事にと全てを自分なりのペースでこなし続けていった。
一人の大人の女性として生活力を身につけ、成長していき、ついに21歳の誕生日を迎えた。

一人暮らしを続ければ、料理の腕も上げざるを得なかった。
自分で作った料理がいい味に仕上がることに喜びを感じ、今は一緒に食べてくれる人が傍にいなくても、後で写真を見せようと思えば、また癒すことが出来る。
しかしそれもやはり一瞬で、傷の完治に半年はかかると言っていたのを思い出さずにはいられない。
今はもう夏。
便りがないのは何とやらだと思うほど、楽観的には考えられなかった。

気晴らしに夏祭りに出かけてみても、宵闇の中の喧騒に身を浸すのは辛かった。
誰もが誰かと来ていて、去年のお祭りには、横にベリアルがいた。
守られない約束が増えていくたび、不安が胸を押し潰そうとしてくる。




































