学園祭にも間に合わず、友達のあいりもとんと見かけなくなったベリアルがいないことに触れてくるので、当たり障りのない理由でごまかすが、忙しいだけだと信じたいのは誰よりもよしの自身だった。
蝉の声が聴こえなくなっても一人のままで、京都・奈良の寺社仏閣を巡る研修旅行が始まった。
紅葉と共に見る国宝や重要文化財は世界に誇る宝なのだろうが、それらばかりを見なければならないことに同級生は愚痴を零し出し、よしのも同じ気持ちだった。
しかし、横顔がベリアルによく似た女性を見かけた瞬間、心が弾んで思わず声をかけていた。
当然ただの観光客で、自分で自分を悲しませただけだった。

コートが手放せなくなってくると葉も落ち始め、あれからもうすぐ1年経つ12月。
本人からもサタンからも連絡はなく、慰めなのか、彼ら悪魔について戯れに調べていた。
ベリアルが有名な悪魔だったと知って驚いたが、書籍によって内容が違い、だから内容が濃そうなものを見つければわざわざ購入していた。
サタンが魔王だと知ってそれにも驚いたが、ずっと傍にいたベリアルのことさえ、ほとんど何も知らなかったことに気づいた。
ベリアルが作ったアルバムは、契約を交わした13歳以降から始まっていた。
生まれる前から傍にいたことが分かるかもと、両親が作ったアルバムをダンボールの中から引っ張り出してみると、2歳の頃の自分がベリアルと触れ合っていた証拠の写真が残されていた。
無邪気な顔で写真に納まる自分が描いていたのは、間違いなく天使の姿の時のベリアルだった。

愛に触れると、悲しみと寂しさがこみ上げてくる。
もう一人の大人として生活していけるようになったのに、それを証明して見せたい相手はいつまでも帰ってこない。
生活力を身につけたのは一人で生きるためじゃなく、一緒に生きたいからだった。

ベリアルになのか、未だ見ぬ神になのか、無事な帰りをとにかく願った。
ついに1年が経ち、今日は終業式だった。
クリスマスイブなので同級生たちは彼氏とデートだとはしゃいでいて、独り身のよしのに気を使おうとするが、彼女は何も聞こえていないふりをして、もう既婚者だと暴露したい気持ちを押し止めた。
1年も経てば、最悪の想像ばかりが膨らんでいく。
想像し、否定しを頭の中で繰り返していると、人間の男で初めて恋をした旭が彼女と幸せそうにしながら横を通った。

彼に感じる申し訳なさは消えないが、幸せそうな表情を見て少し罪悪感が薄れていく。
申し訳なさついでに、彼が恋させてくれなければ、ベリアルとの関係も変化することはなかっただろうと思える。
彼が辛い目に遭わされたことの罰として、ベリアルは切り刻まれ、よしのには不安の日々がもたらされた。
それなら仕方ないとしても、せめて命だけは奪わないでと神に願わずにはいられなかった。

部屋に入る時、「ただいま」と声に出すのを心がけていた。
そんな防犯意識でしかない挨拶に応えてくれる相手がいないはずの部屋から「おかえり」と聴こえてきた。
自然と顔が緩みながら顔を上げるが、それはすぐに驚きの表情に変わった。
帰りを待っていたのは、不安な想像を現実だと伝えに来たとしか思えないサタンだった。

感想
この愛は、異端19話20話でした。
感動の連続で涙がポロリでした。
雰囲気ぶち壊しで言えばただのツンデレ悪魔でしたけど、密かにデレ具合が命懸けの連続だったので、愛の深さはとてつもない。
果たして、サタンは何をしに来たのか・・・
https://www.kuroneko0920.com/archives/48816



































