熱くて濃い5時間を振り返りながら彼がテクテク歩いていると、明らかに暗く重い空気を纏った小早川に出会った。
当然、小早川にも蛍が殺されたかも知れない報告が届いていたので、今にも死を選びそうな悲壮感を漂わせていた。
弟の彼を気遣う余力は残しているようだが、郷田に付き添われる彼女を見ると彼は複雑だった。

蛍の思惑通りに兄を嫌っている彼は、死のうがどうなろうが悲しみなど感じていなかった。
そう思ってはいたが、同じ境遇だった香里とは今の何とも言えない心の内を語り合いたい気分だった。
そうしてらぎ姉を散々抱いた後の足でながみんの様子を見に行き声をかけるが、寝ているのかまた返事は返ってこない。
その時、不意にながみんについて誰かに話しかけられた。
顔も見ずに何気なく答えた直後、それが香里だと気づいた。

彼はここに香里がいる意味と聞くべきことが分かるものの言葉にならず、逆に香里は兄のどもりから秋保の現状を見抜いた。
彼は兄妹愛を再確認できた嬉しさは横に置き、保菌者無効化について言及した。
香里は急に暗く沈んだ顔に変わり、思わせぶりに少し溜めてからテッテレーと開発に成功した注射器みたいな保菌者無力化装置を披露した。
鍵を借り、兄妹仲良くながみんの部屋に突入。
あまりの騒がしさにながみんも身体を起こすがやはりかつての元気はなく、静かに弱っていく病人のようだった。
香里は死の淵から蘇って手に入れた目で見つめ、お腹に集中して光が集まっているのを確認し、注射器は注入ではなく吸うためのものだと説明し始めた。
一言で言えば注射器を刺して進化情報を吸い取り、感染を止めて回復させる仕組みになっていた。
重要な役割をする針の中のフィルターは父の研究成果だとも明かして彼の家族愛を深め、そして引き締まったながみんの腹筋に針を刺した。

見た目には何の変化もないが、成功していればこれで注射器の効果が出るはず。
ただ初の人体への使用だから確証は何もない。
それよりながみんは、なぜ注射されたのか分からないほど、自分の状況を忘れ切っていた。
香里はながみんが手遅れの状態だとビビッたが、これこそ彼の知っているいつものながみんだった。

ともかく、ながみんの処置を終えた兄妹は改めて再会の喜びを分かち合うため、ハグしようとした。
しかし、妹が兄の胸に飛び込む前にながみんが彼の腕にしがみついた。
驚く兄妹。
どうしたのかと訊かれたながみんは、もごもごと口を開き、少しだけ背の高い彼を上目遣いで見つめ、頬を染める。
自分が黒い保菌者に感染されたことを忘れるほど考えていたのは、彼と付き合うかどうかで、今答えを出したのだった。

その頃、蛍が死んだかも知れないことで小早川はこの世の終わりのように塞ぎ込み、蛍の名だけをぶつぶつと連呼し続けていた。
その時、非通知の電話がかかってきたので、蛍からだと思っていつもの明るい表情を取り戻した。
感想
インフェクション118話119話でした。
片や命からがらの逃走劇を繰り広げ、片や新しい命を作らんとする愛のまぐわいですが、弟が幸せなら兄は結果オーライなんでしょうね。
そして、最後に気づいたらしい黒幕の正体は、おそらく蛍とかなり近しい人物な気がします。
らぎ姉が十分にお色気要員の役目を果たし終われば、今度はながみんですね。
https://www.kuroneko0920.com/archives/51898
































