123話
あの時、ぶっ殺すと言われた時、高木は嬉しくて堪らず歪な笑顔を零していたが、さすがに晴輝が本気で殺せるとは信じ切れていなかった。
だが、今ここで彼の表情を見た瞬間、自分を殺してくれるまでに成長していることを確信できた。
自分を殺せば犯罪者の烙印を捺されるかもしれないが、ここで自分を殺せば今までの刷り込まれた価値観から脱し、やるべきことをやれるようになった人間なのだと高木は語る。
自分を殺した経験なんて、氷山の一角。
これから大量に人を殺していくのだから、いちいち気に病む必要はないのだと言い切った。

理解できない物言いに山田は疑問を持つが、彼はただの延命手段だろうと答え、尋問でもするかと問うが、山田はその必要性を感じず、予定通りにやれという。
ただ、彼には一つ高木への質問があった。
銃をわざわざ床に置いた彼は丸腰をアピールしているつもりなのか、それとも他に意図があるのか、剣呑な空気は孕んだまま、敵側かどうか問い質した。
その問いも、高木にとっては嬉しいものだった。
だから高木は正直に飄々と、犯人側だと白状した。

それでも彼は表情を変えず、敵意をむき出しにしたまま見下ろし、淡々と友情の終わりを告げた。
死を前にしてもいつもと変わらない飄々さを保つので、彼はイラつくが、高木は殺されようとしているから嬉しいんだと煽るように笑い声を上げた。
引き伸ばしているように感じた山田が声をかけた直後、彼は腰につけていたナイフに手を伸ばした。
ナイフを抜くや否や流れるように太刀筋が動いた。
刃の先は高木の腕をなぞるように流れた。
神城との訓練で技術をめきめきと上げていた彼のナイフ捌きは、まさに達人の域に達していた。

腕を切り落としたようにさえ見えた一瞬の動きは、薄皮を切っただけだった。
綺麗に曲線で切り裂かれた皮の隙間から、血がぷっくりと滲み出した。

高木は感激した。
画面越しに見るきららたちも言葉を失う緊張感の中、目にも止まらぬ速さでほんの表面だけを切った妙技。
高木がこの技術で殺されることに感動し、喜びの絶頂を迎えようとしていた。
高木を見ている誰もが高木の心境を理解できていなかった。
ただ、紗月の見立てが外れそうな気配は色濃く漂っていた。

感情を殺して、ただ殺さなければならない相手を殺す覚悟をしている彼の目の色は、誰も否定できなかった。










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