7話
千秋、意気揚々と行きつけの焼き鳥屋に立ち寄った。
時刻は日も暮れ、サラリーマンたちが帰路に着く頃、さっきまで女装して美女を装っていたとは思えずいつものスーツスタイルで暖簾を潜り、店主に一声。
ハゲ店主は今夜も3本かい?と常連の千秋に一応訊ねるが、彼は少し照れながら豪勢に「10本」注文したのだった。

店主は瞬時に千秋の表情から就職を決めたのだと見抜いて賛辞を送り、他に客がいないしけた店内が温かい空気に包まれた。
千秋の人生の転機は弟たちの人生が変わることにも繋がる。
その気前いい10本が弟たちへのお土産だと聞いた店主は気分が良くなり、一杯奢ることで他人の幸せを共に感じることにした。
恐縮しながらビールを頼んだ千秋がジョッキを手にすると、店主も同じくジョッキを持ち、就職を祝してグラスを合わせた。
しかし、千秋はジョッキを持ち慣れていなかったせいか、口に運ぶ前に零してしまった。
しかもビールの落下地点には気配を殺していた唯一の客の鞄があり、入っていた封筒を一気に黄金色に染め上げてしまった。
千秋はせっかくの輝かしい夜にいきなりトラブルを起こしてしまい、謝りに謝った。
しかし、封筒を取り出す客の顔をふと見ると、思わぬ事態にハッと息を呑んだ。
その人はなんとも端正な顔立ちをした美女なだけでなく、ビールを零されたからか大粒の涙を零していたのだった。

何が原因で泣いているのか判然としなかったが、彼女は千秋に怒っている様子はなく、むしろ席が空いているからと言ってバッグを置いていた自分が悪いのだと謝るので、千秋は逆に申し訳なくなってもう一回焦って謝った。
彼女は封筒の中身の状態を気にしているようだったが、もう使わないからと言って、弁償を求めてはこなかった。
ともあれおめでたい席が台無しなるトラブルには発展せず、密かに話を聞いていた彼女は祝いの一杯を奢らせて欲しいという。
千秋は見た目も中身も美しい彼女に、ドキドキが加速していた。
期せずして二人で飲むことになった千秋と謎の号泣美女。
話題は千秋の就職なので自然と身の上話が始まり、弟たちをこれから養っていくんだと誇らしげに話すと、彼女はジョッキをグイグイ傾けながら立派だと褒めつつも、夢に向かって走らなきゃ~なんて、無責任に酔っ払いの戯言を吐き出し始める。
それでも千秋は気分が良いのでタワマン在住が夢だと答えたのに、彼女は焼き鳥を食い散らかしながらくだらねー夢だと全否定。

さすがに聞き捨てならなかった千秋は、じゃあどれだけ立派な夢を持っているんだと訊き返した。
彼女は打ち明けようとするが、濡れた封筒に手を置くとまた大粒の涙を零し始め、嗚咽交じりで声が詰まっていく。
千秋はそれで黄金色の封筒に夢が詰まっていたのだと察した。
結局打ち明けるには相当な勇気がいったのか、彼女はそれ以上語らずにまたジョッキを真上にまで傾けて残りのビールを喉に流し込み、泡を細い首に垂らしていく。
素面の千秋はそれ以上の飲酒をしないよう諭すが、質の悪い酔い方をするらしい彼女はまたしても汚い言葉を吐き出し、酒乱の本性をすんなり発揮。
常連の彼女をマリコと呼ぶハゲ店主も飲み過ぎだと注意するが、彼女は見た目をそのまま悪口に変えてどんどんめんどくさくなっていく。

だが、説教は一番嫌いだったのか、マリコは自分から祝いの席をぶち壊した詫びなど一切なく、お暇を告げて出て行った。
あばよという清々しい捨て台詞で去られても、代わりに店主に謝られたら怒る気にもなれなかった千秋は自分も弟たちが待つ我が家に帰ることにした。
人通りがない裏道を歩きながら、千秋は今日一日の目まぐるしい出来事を振り返った。
女装面接。
ゾウさんに谷間に謎の吹かし屋。
先輩の臨死体験に人工呼吸。
犬、日本語の通じない運転手。
そして酒乱美女。
ただ、最後の一人はいつ襲われてもおかしくない股おっぴろげ状態で爆睡していた。

その頃弟二人は長兄の帰りが遅いのを心配しつつ質素な夕飯を口に運び、今までと同じく採用されずに帰りづらいのだろうと思っていた。
次兄の千春がやはり自分もバイトでもすべきか、そう考えた直後、長兄が大きなお土産を持って帰ってきたので驚いた。
だって、焼き鳥100本分の値段でも買えなそうな美女だったのだから。

驚く弟たちの誤解を解くためにさっさと焼き鳥10本を出した千秋はそっちがちゃんとしたお土産だと言って、仕事を手に入れたことも伝えた。
ただ、この美女は職場の同僚ではなく焼き鳥屋で偶然会った酒乱で、道中、パンツ丸出しで爆睡していて危険なので連れ帰ったとしっかり説明。
そして千春は今朝の悪態を謝り、千秋も長兄としての頼りなさを謝り、共に家族の幸せを願う二人のわだかまりは解消された。
その横で天使千夏はマリコの鞄を漁り、封筒の中身を勝手に見て漫画家?と疑問を投げかけた。
封筒に入っていたのは、怪しい画力で描かれた漫画の原稿だった。
千秋は漫画の持ち込みが芳しくなかった直後に自分がビールをぶっかけて追い打ちをかけたかも知れないと思い、マリコが起きたらもう一度謝ろうと思った。
深夜、マリコに寝場所を譲った千秋は台所と水回りを隔てる短い廊下で布団を掛けて寝ていたが、足音でスッと目を覚ました。
視界に入ったのがマリコの服装だったのでトイレだろうと思い声をかけたが、時既に遅し。

彼女はかなり寝惚けているらしく、自分の家と勘違いしているのかまだ酔いが覚めていないのか、するすると下着姿になるや、パンツまで全部脱いだ。
そして千秋は薄暗い中、マリコの生股間を見上げて完全に覚醒したが体が動く前に顔面騎乗位をされてしまうのだった。

感想
ロウヒーロー6話7話でした。
まだまだ、どの方向で話が進んでいくのか分かりませんね。
爆乳お姉さんヒーローもパワーはあってもスピードは一般的っぽいですし、星は多分童貞で、千秋はシンプルな美少女で。
https://www.kuroneko0920.com/archives/55597
































