70話
彼は聞き間違いだと思いたかった。
なぜなら、ピチニットショートパンツの飛行帽女が、自分たちは嫉妬深い神を守るためにいるとかほざいたのだから。
彼にとって衝撃の事実を暴露した飛行帽は顔色一つ変えずに部屋の中に歩み出し、エルザの忘れ形見を拾って彼女の死を実感した。
崩月。
飛行帽も何人ものそれを経験してきたのか、バニーユと同じく取り乱すことはなく、逝ったことを淡々と受け入れているようだった。
バニーユが崩月開始後の交尾でもダメだったと伝えても、それはそうだろうと事も無げに言い放つ。

飛行帽はさっさと交尾せずに死んでいったのを、下手に感情なんか持ち込むからだと、死者を責めているようでもあった。
彼はいい加減切れた。
自分が二度も死んで蘇ってまでして嫉妬深い神を殺してこの世界の女の子たちを救おうとしているのに、逆に神を守っているとかいう訳の分からないサンドリオのガーディアンたち。
もしかして自分が認識している呪いが解けるシステムが間違っているのかと思い、神の死=解呪ではないのか?と挟みつつ、彼女たちの目的も訊ね、たった一人の自分の交尾スピードではろくな人数を救えないと断言した。
しかし、怒りと戸惑いの叫びは飛行帽の失笑を招いただけだった。
これでもかと煽り顔を見せた飛行帽は、彼の見苦しいモノにしか期待していなかった。

やはり彼は、肉棒をおっ勃てるだけの交尾マシーンとしか思われていなかった。
一方、人をイラつかせる天才のアルルと合流したルーミたちは、ついに砂嵐を目の前にしていた。
ルーミはここに来て、遠くから見ていたのとは段違いに巨大な嵐だったことに驚きを隠せず、街一つを覆っているにしてもあまりに大き過ぎるだろうと、驚愕の感想を漏らした。

一体ここまでして、何を隠しているのか?
マヤは改めて、遺跡の宝を守るための結界であり、恐ろしい魔女のガリアでさえ近寄れないからこの世界の平和が保たれているのだという。
それはもう聞いたルーミは、もう一つの疑問を投げかけた。
サンドリオ教団が嫉妬深い神を信じているならば、ガリアを招き入れて神を起こさせれば良いようなものだが、そうしないのは、宝の方が優先すべき大事なものだからなのか。
マヤは実は宝が何なのか知っていそうな顔をしながら、論理的にそういうことになると答えた。

ルーミはもっと宝への興味が湧きつつ、正々堂々、正面玄関も何もない嵐に向かって「たのもう」と叫んだ。
その頃、怒りと戸惑いが解消されぬまま監禁部屋に一人残された彼はベッドに寝転がって天井を見上げながら、自分の考えが甘かったことを改めて自覚した。
話して触って交尾して、今までと同じくガーディアンなら最終的にどうにかなると楽観視していた考えを消し去り、自力で脱出する方向にシフトした。
4Pも十分にできたでかいベッドをドアに立てかけた。
さすがに大きな音がしたので廊下で待機していたバニーユと眼帯が気づいた。

バニーユはドアノブをガチャガチャして入ろうとするが当然開かず、眼帯に人を呼びに行かせた。
時間を稼いでいる間に彼はカーテンを開けてテーブルを持ち上げ、窓に打ちつけられた板を破壊しようとした。
意外にも一度で外の光が射しこんできたので、何回かぶち当てるだけで完全に破壊できそうだった。

駆けつけた飛行帽たちも彼が窓から逃げようとしているのに気づいた。
逃げられないのは分かっているが、外に出られたら彼に待っているのは死のみ。
それはまずいので飛行帽たちは力を合わせてドアに体当たりし始め、彼も止めの一撃をぶち込んだ。

ついに窓を覆っていた板がほぼ破壊されて外と繋がり、彼は久しぶりに笑顔になれた。
しかし、外の景色を眺めて、薄々ながら予想していた事態と同じだったことに絶望するしかなかった。
ビル、ビル、ビル…
いくつもあるビルは砂に埋もれかけて朽ちようとしていた。

感想
パラレルパラダイス68話69話70話でした。
このタイミングでエルザ崩月となれば、彼が解放される可能性が高まりそうな気もしますが、とにかくエルザが先に上半身だけ消えたのは、さすがに笑わずにはいられませんでした。
そしてついに明かされた猿の惑星と同じパターン…
https://www.kuroneko0920.com/archives/55253
































