意味が分からない紗月はキョトンとし、らぎ姉は話しかけるが、彼は何でもないように大丈夫と笑顔で答え、納得しきれない様子の蓮華から無線機を半ば無理やり受け取った。
山田はその時「なるほど」の意味を理解したが、紗月はまだ理解できない。
その直後、彼は淀川たちに代わり、自分が秋保全体の指揮を執ると宣言した。

そうと決めれば彼はすぐに蓮華に会議を準備するよう指示し、不安を与えないよう饒舌に前向きな言葉を吐き出し続ける。
だが、自分で責任感を背負って一番プレッシャーを感じているのは、他ならぬ彼自身だった。
さっき誓ったばかりの大切な人を守れる自分でいるため、それを可能にできる自分のリーダー像を演じようと必死になっていただけだった。
無線の先の戦闘班にも鼓舞する声をかけて自分がリーダーになったことを知らしめていくが、一人が彼がリーダーになることを反対だと言い出した。
その瞬間、また違う緊張感に包まれた。

彼は声で相手が誰か分かったが、あくまで冷静に淀川に信頼されていた自分がなるのが順当だと諭そうとする。
それは相手も分かっていると言い、それどころか川内の避難所に彼が来た時から始まり、香里に安らかな最期を迎えさせるために脱走したこと、消防隊に志願したこと、川内崩壊時も第一線で働いていたこと、全てを見てきたという。
だからこそ、避難民全員の命を預かる計り知れない重荷を、まだ高校生の彼に背負わせられないというのが、反対する真意だった。
そう、隊長と呼ばれていても一般的に彼はまだ子供で、大人はまだまだ他にたくさんいるのだ。
彼は大人の思いやりに何かを感じたようだが、淀川の信頼に応えてリーダーになると決めたのではなく、自分なら重荷を守り切れると確信しているからだった。

その固く強い意志に、反対していた相手は納得した。
そして無線を切った直後、彼だけが遠くで鳴った発砲音に気づいた。
その発砲音で、彼の中で全てが繋がった。
急に独り言を漏らした彼にらぎ姉たちは戸惑うが、彼はまた一人で犯人の目論見の答えを出していく。

そして山田に詳しい説明もせず指示にだけ従えと言うと、山田も自信満々に全てを言い切る彼の言葉を信じて、彼をリーダーと認めたのだった。
この時にはもう、高木の姿は部屋から消え失せていた。































