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ライムライト・レモネードジャム

102話

道隆は新幹線で名古屋に向かっていた。

 

しかも、なぜか車中では隣に千歌もいて、兄妹仲睦まじい時間を過ごせていた

 

救出してくれた兄を慕う妹と、家族愛を越えたものさえ抱いていそうな兄の愛の囁き。

 

スマホの美少女AI相手とお喋りしている危ない男が隣にいることで、一般客は触らぬ神に祟りなしとできるだけ距離を取っていた。

サタノファニ
著者名:山田恵庸 引用元:ヤングマガジン2019年36・37号

 

 

友人に異常な愛を知られるのも構わずAIで心を癒していた道隆の愛は、何があっても揺らぎそうになかった。

 

 

こうして好きなだけ擬似千歌と過ごせるのも、胡桃沢を須藤との連絡係として横浜に待機させたおかげだった。

 

その胡桃沢が調べたところによると、名古屋ポートビルの大量殺人事件の被害者は皆、堂島姉妹が起こしたフェイスレス事件の遺族で、事件発生と同じ時刻に姉妹の父親が近隣の公園で自殺していた。

 

ワイドショーでは父親が遺族たちへの賠償で逆恨みし、ビルを貸し切って復讐したという筋書きで騒がれていた。

猟銃の扱いにも長けていたことから、姉妹が数十人を撃ち殺すよりも現実的だと胡桃沢も考えていた。

 

 

道隆もその可能性は頭に入れつつ、西の見解を信用して姉妹によるものだとも考えていた。

 

そうならば姉妹の身柄を押さえて五菱の非人道的な実験の証拠を掴めるかも知れない。

 

全ては千歌の裁判をやり直して無罪にするためだった。

サタノファニ
著者名:山田恵庸 引用元:ヤングマガジン2019年36・37号

 

 

 

AI千歌との楽しい旅はあっという間に終わり、名古屋港に着いた。

 

 

もちろんビル内は警察により立ち入り禁止になっていたが、鑑識のフリをした道隆はぬるっと潜入に成功し、凄惨な事件の痕を写真に撮りながら、どういった風に26人が撃ち殺されたのか想像を働かせた。

サタノファニ
著者名:山田恵庸 引用元:ヤングマガジン2019年36・37号

 

 

観察すればするほど散弾銃を撃った痕跡がないことに違和感がもたげ、拳銃での殺害と思わざるを得なくなる。

 

男女入り乱れた足跡の血痕の中に、一際小さい足跡があり出血が多いことから、拷問を受けたことが予想できた。

 

それが遺族たちの復讐リンチなら、凶器は姉妹が奪い取ったものの可能性が高いことが分かったが、よく見れば二人ではなくたった一人で26人相手に立ちまわっていることが見て取れた。

 

次々とヘッドショットをキメている驚異的な腕だと分かる以上、この事件の犯人が父親の可能性は限りなく低くなった。

 

瀬里に会ったことがある道隆は、彼女が華麗に銃を扱う様が鮮明にイメージできた。

サタノファニ
著者名:山田恵庸 引用元:ヤングマガジン2019年36・37号

 

 

 

瀬里なら十分やれそうだと感じた道隆は次に、彼女が倒れて這い始めた痕を見つけると、数十人を一人で殺せるのにどうしてリンチされたのかと考えた。

 

父親がビルを貸し切り遺族を招待したなら、売られた。

 

それをした親の気持ちが理解できず、言いようのないやるせなさに包まれた。

 

だから、千歌がどんな悪人になってしまっても味方でいてやろうと誓った。

サタノファニ
著者名:山田恵庸 引用元:ヤングマガジン2019年36・37号

 

 

這った後は途中で終わり、そこに多く血だまりができたようだった。

 

そしてすぐそばにある椅子に血がついていることから、そこに瀬里が横たわったらしいと分かると同時にもう一つ足跡を見つけ、自分で寝たのではなく寝かされたのだと気づいた。

 

それは、妹の真希以外にあり得なかった。

 

 

直後、須藤と連絡が取れた胡桃沢から電話がかかってきた。

サタノファニ
著者名:山田恵庸 引用元:ヤングマガジン2019年36・37号

 

 

接触を促していた内田医師はある宗教団体の本部に召喚されて戻ってこないということだった。

 

その団体とはここ数年で信者数を飛躍的に伸ばして全国に支部も作っている新興勢力、真聖教団だった。

 

しかも、五菱とは違うアプローチでミラーニューロンを研究しているらしい、きな臭さたっぷりの団体だ。

 

 

 

名古屋市の郊外。

 

帰宅する人が多くなる、街に明かりが灯った時間帯。

 

 

下水道から地上に出ていた真希は裸足で異臭を放ちながら呆けて歩いていたせいで、すれ違う人たちの注目を浴びていた。

 

姉が死んだことをまだ受け入れられておらず、更にパパも自殺したと知り、いよいよ精神が崩壊しかけていた

 

そうしてぶつぶつ独り言漏らしながら歩いていると、誰かが声をかけてきた。

サタノファニ
著者名:山田恵庸 引用元:ヤングマガジン2019年36・37号

 

 

柔和な笑顔を貼り付け、清潔感漂うワンピースで揃えた明らかに宗教や怪しげなビジネスに誘ってきそうな雰囲気を醸している二人組の女性だった。

 

 

どう見てもまともに見えない真希に声をかけた理由。

 

相手が知る人ぞ知る殺人鬼と分かってなのか、熱心な信者だからなのか。

 

二人は新興宗教に真希を引っ張り込むつもりだった。

サタノファニ
著者名:山田恵庸 引用元:ヤングマガジン2019年36・37号

 

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