両手で大きくなった手を握り、お礼を伝え、待ってるから生きてまた会おうと望んだ。
精一杯不安を隠した表情で別れることが、彼が思いっきり戦えるようにする唯一のことだった。
紗月が彼に負けない全力の演技をすると、彼は紗月の望みを約束にして受け入れたのだった。

できることをやった紗月はバスに乗り込み、窓から彼に手を振ってすぐに出発した。
動き出して程なく顔を覆った紗月は、小さく震え出した。
すぐに自衛隊が塞いでいた隔離地域の境界線に差し掛かったが、もうそこには何もなく、バスはスムーズに山道へと近づいていく。
それで乗り込んでいる人々は隔離地域脱出の実感が湧き始めた。
その辺りで我慢できなくなった紗月は、声を出して泣き始めた。

それが感動の涙だと勘違いした他の人たちに涙が伝播し、あちこちでむせび泣く声があがっていった。
彼に愛されながらも背中を預け合う仲間になれなかったのが、自分がそちら側に行く選択をしなかったからだと思い知った紗月は、今更後悔している自分を責めた。
しかし、このままの自分でい続けるつもりはなかった。

麗が我が子のために強くなったように、彼の横に立てる自分になる努力をしようと誓った。
彼も脱出して再会できるのを信じているが、万が一の時は自分から会いに行けるようになるつもりだった。

その頃、山中にいた高木と犯人はバスが峠道を進んでいくのを眺めていた。
そして犯人は、賢い人たちが集まっている隔離地域のある場所に行ってくると伝え、一人動き出した。



































