21話
マリコが振り返るとそこにあったのは、そそり立つ男根だった。
なんともいい笑顔でペットボトルと手を差し出す辻井は、本気を見せてもらおうかと言いながら二ヤリ。
千秋は未だグロッキーで、助けてくれる者はいない。

マリコは枕営業などを受け入れずに突き飛ばして逃げようとするが、辻井の汚らしい手に手首を掴まれてしまった。
あくまで漫画についてだと強調する辻井は、グイグイと部屋で連れて行こうとする。
マリコは悲鳴をあげた。
どれだけの時が経ったのか、千秋は電灯の眩しさにようやく目を覚ました。
頭痛で頭を押さえながらよろよろサニタリーから抜け出してみると、天蓋付きの豪華なベッドにマリコがもたれかかっていた。
しかもマリコは憔悴しきった様子で、服にあちこち血が飛び散っていた。
酒を飲み過ぎてからの記憶が全くない千秋は、自分がマリコを犯してしまった可能性を考え、何かしてしまったのか訊ねた。
しかしマリコは首を横に振る。
ではあの編集が?
マリコが首を振らないので激昂した千秋は、編集をぶち殺そうと駆け出したが、涙を溜めたマリコが違うのと叫び、呼び止めた。

昨夜の顛末はこうだった。
勃起チン〇丸出しで引っ張られたマリコは悲鳴をあげ、拒絶し、触らないでと叫べば、辻井は素直に手を離したが、彼女がなんで怯えているのか理解できない様子。
そして、マリコに下半身事情を指摘され、自分が丸出していることに気づいて、ようやく恥じらいを持って着衣したのだった。

実は辻井もベロベロに酔っ払っていて、我が家と思い込んでまず脱いだらしい。
辻井がいう本気を見せろと言うのは、過酷な週刊連載において、酔っ払った状態でもネームが切れるかどうかを確かめたかったのだという。
それがギャグ漫画ともなれば生半可にできることじゃなく、立場を利用しておいしい思いをするつもりなんて一切ないともいう。
その時、マリコは辻井の言葉に引っかかった。
ギャグではなく、マリコはシンプルなラブストーリーを描いているつもりなのだから。
ラブコメでさえないことに驚きを通り越して恐怖を覚えた辻井は、打ち合わせに男を連れてくる非常識さはギャグ漫画家ならギリ何とか許容できる範囲で、恋愛漫画家がしたら単なるサイコでしかなく、漫画の内容もギャグじゃなかったら面白さゼロだとこき下ろし、マリコ自身がただただ怖いと捲し立てた。

そこまでぶちまけて怒りがこみ上げてきた辻井の言葉遣いが悪くなってきたその時、マリコは耐えられずに彼の髪を掴み、清々しいほど綺麗な膝蹴りを顔面にぶち込んだのだった。
そこまで聞いた千秋は引いたが、マリコが振るった暴力は膝蹴り一発で治まらず、部屋がめちゃくちゃになるくらいボコボコにしていた。
そのイキ過ぎた暴力だけじゃなく、漫画のプロに怒りさえ感じさせたなら漫画家としてやっていけるはずがないと思い、人生終わりだ田舎に帰ると泣き喚き、駄々っ子みたい手足をバタバタさせ始めた。
これから一緒に恋も始めようとしていた男の前でも、理性を失わせられるほど絶望していたマリコ。
しかし、千秋も千秋でこの短時間で覚悟を決め、マリコに跨るとはっきりプロポーズしたのだった。

ここから、本格的にラブコメが始まろうとしていた。



































