151話
進化し続ける保菌者3体に囲まれたながみんは防戦一方に追い込まれた。
一体は触手のように扱える髪を繰り出してくるので、ながみんの薙刀では圧倒的に分が悪く避けるしかない。
一体は腕のリーチを伸ばして拳を重く巨大化させ、薙刀と距離を取りながら一閃で仕留められない形態に変化した。

保菌者の攻撃が地面を抉って土が降りかかるたび、避難者たちは悲鳴を上げてながみんの勝利を信じられなくなっていく。
彼らの不安が伝播したかのように逃げ場を失ったながみんは、きららの目の前で拳自慢の一体に捉えられてしまった。

後ろに下がった瞬間の宙に浮いているところに、渾身のストレートを叩き込まれた。
腕で身体をガードするだけで精一杯だったながみんは避難者たちの中に吹き飛ばされた。
常人なら肉片に変えられていた攻撃を何とか受け止めただけでも、不幸中の幸いと言えたかもしれない。
時を遡り、晴輝たちが神城にトレーニングしてもらっていたある日のこと。
その日の訓練が終わって一足早くながみんが帰った後、晴輝は轟にながみんについての相談を持ちかけたことがあった。
本人と話してもイマイチ分からなかった上での相談とは、何を考えているか分からないながみんが実際は何を考えているのか?彼女の中にある哲学みたいなものはどういったものなのか?
それを彼は隊長として理解しておくべきだと考えた。
彼が懸念しているのは、結果的にながみんは自分が住む近所の住民を多く守った英雄になっているが、彼女自身に人命救助の考えなんて一切ないことだった。

まさに戦闘狂いが高じて、それが人助けに繋がっただけ。
助けを求める人にも助けた人も何とも思っていないながみんは、ギリギリの時にも戦いを選択して作戦に支障を来す恐れがあった。
その防止策を考えるため、彼は武術家同士として、轟に意見を求めた。
少なからずながみんの気持ちに共感した轟は、彼女は今、自分の全力を出せる状況に幸せを感じていて、それは一生安泰の大金を手に入れるよりも刺激的なことだろうという。

薙刀一本で保菌者騒動を生き残れるほど薙刀に心血を注ぎ、腕を磨いて来たながみんは若くして日本一になり、それ以来世界一として無敗であり続けた。
普通なら世界一になった喜びに打ち震えて研鑽を続けるところだろうが、薙刀というマイナースポーツにおいてながみんの地位を脅かす存在はいなくなった。
轟がその立場だったとしたら、一瞬の喜びの後に未だかつてない苦しみを感じ続ける日々が始まっただろうという。
世界中に多くの競技者がいるメジャースポーツなら、そもそも世界一になるのも至難の業で、それを維持するのもまた難しい。
好きこそものの上手なれで世界一にまで登り詰めたながみんに待っていたのは、全力を出せなくなったつまらない日々だった。
だから今は、本物の薙刀で全力を振るえる敵との戦いに至福の悦びを感じていて、人の生死など目に入らない状態なんだろうと轟は評した。

































