9話
お漏らしした弓月から話を聞いたことで、優奈は一気に真相に辿り着いた。
そして運営にどのカメラの録画を見るか伝えたのだった。
菜月の部屋に戻った優奈は、弓月を伴っていないことを訊かれると、一応彼女の名誉を守るために寝汗をシャワーで流しているとごまかしておいた。

それと、犯人ではあり得ない弓月がここにいる必要もないと言い切った。
監視カメラの映像も確認して犯人を割り出せていると語る優奈は犯人に対し、説明の途中でも自首することを促した。
わざわざ情けをかけるのは、犯人に本気で怒っているからだという。

犯人を突き止めている以上、そのやり方も分かっている優奈はそれが気に入らず、名乗り出ない場合はそれなりの制裁を受けてもらうつもりだと念を押した。
その念押しでも、この場にいる誰も自首することはなかった。
優奈は順序立てて説明し始めた。
まずは動機。
ライバルを傷つけてゲームから退場させる、自作自演で誰かに罪を擦り付けて失格に追い込む。
この二点が考えられるが、看破された時のリスクに比べると序盤でこんな博打を仕掛けるにはリターンが少なく違和感が残る。
つまり動機にしては弱く、そこから絞るのは難しいと考えた優奈は、詩織、瑠華、サキの3人の怪しい点をピックアップした。

かといって怪しいだけで決定的証拠があるわけではない。
そして改めてついさっきのやり取りを纏めたこの説明の中にこそ、見逃せない違和感があったんだと続けた。
この時点でも、まだ誰も自首しようとしない。
それを確認した優奈は、サキがなぜワインの瓶を凶器と判定したのか理由を改めて確かめてから、その次に言葉を発した人に突きつけた。
それは菜月で、背後からいきなり襲われたにはしては狂気がワインの瓶だと断定できたのはおかしいことを指摘した。

ここまで接してきた井田菜月という人間は、臆病で思慮深い。
偶然視界の端に映ったのだとしても、そんな人間が嘘を吐いてはいけない状況ですぐはっきり凶器を断定したのは、明らかにおかしかった。
しかし優奈は、単なる菜月の自作自演ではないという。
それは昨晩、弓月が菜月の部屋に誰かが入って行くのを見たから言えることだった。
奇しくも自分の部屋で弓月に失神するほどイカされた優奈は、弓月が部屋へ戻ったのは外出禁止になる12時ギリギリ前くらいだと推定し、その時に誰かを見たのなら、犯人は外出禁止のルールを破ったことになる。

菜月の自作自演ではあるのだが、菜月はあくまで唆された側であり、主犯は菜月の部屋を訪れて計画を実行させた誰かだった。
そこまで指摘された菜月はみるみる青ざめて口ごもり、最早認めているようなものだった。
菜月が真犯人に口止めされているのも見抜いていた優奈は、ここまでのやり取りで誰が主犯か導き出せるはずだという。
ルールを恐れず破り、凶器を悠々と手に入れ、サキの急激な態度の変化に納得でき、菜月の弱みを握って利用できる唯一の人物。

そこまで明かしても、まだ誰も名乗り出ようとしない。
優奈が忌々しそうに眉を歪めてその人物に声をかけた直後、ドアノブが回された。



































