175話
蓮華のダイイングメッセージで犯人を見抜いた神城は、驚く彼の問いかけに冷静に答えた。
その正体を神城が口にしようとすると、犯人はついに僅かな焦りを見せ、黙れと言うが、神城は気にせずに蓮華が晴輝の近しい人物を探っていたのが間違いじゃなかったと暗に示した。

犯人はどんどん余裕を無くしていくが、神城は変わらず煽るように、ここにいるのは俺とお前の息子しかいないだろうと言い返した。
そこまで明かしても、彼はどちらであるか判断できずに神城に正解を訊ねた。
神城は一旦スルーし、犯人に口封じしないでいいのか訊きつつ、それをできないのが分かった上で、晴輝を殺せないことを指摘した。
正体がバレるのを恐れるのに、口封じできない、しようとしない矛盾。
それは晴輝が保菌者騒動の中で成長していくのが計画の根幹だからだった。

そこまで言っても彼が犯人は誰なのか訊ねてくるので、神城は蓮華がMと遺したダイイングメッセージは、至極シンプルな肉親を示す言葉だったと説明した。
つまり、Motherの頭文字で、母親だと。

彼は心臓の大きな音を聴きながら、きららと一緒に倉庫に閉じ込められた時の母と電話でした会話を思い出した。
そして神城は正直に犯人のフルネームを知らないから、母親の名前を教えてくれと息子に訊いた。
彼は優しく正義の人だった母親の姿を思い出し、口にしようとするので、犯人は諦めて黒いモヤを外していった。
天宮渚。
息子に名前を暴露された犯人は、サプライズが成功したかのようにお道化て見せた。

稀代の大量殺戮犯が母親だと知った息子は、開いた口が塞がらなくなった。
渚はそれさえも愛おしそうにからかい、年相応かつ明るい性格のおばさんらしく、まさに黒幕な態度を取っていた自分を恥ずかしがった。
しかし見た目と口調が本来のものになっただけで、冷酷非情な異常者なのはそのまま。
彼はある訳がない希望に縋り、本当に保菌者騒動の全てを仕組んだ犯人なのか叫ぶように問いかけた。
そんな悲痛な息子の疑問にも顔色一つ変えず、渚は本当だと返した。

直後、らぎ姉は走り出して轟を撃ちながら、神城に自分たちを逃がせと指示し、銃も捨てて彼の元へ走った。
神城は何も言わずに轟のパンチを受け、片腕を粉々に吹き飛ばされるが、すまし顔でらぎ姉に行けと促した。
らぎ姉は彼を抱えると躊躇なく欄干を乗り越えて川に飛び込んだ。
はずが空中で停止していた。
見た目はただのおばさんでも、物理法則を無視して何でもできる渚は、らぎ姉に然るべき罰を与えようとした。

































