132話
フリッツを宿したババアは首をぶっ刺された痛みなどまるで感じていないようで、歯茎を剥き出して気味悪く笑った。
むしろ突き刺さった枝をグリグリ動かし、バカ笑いすると、不意をついたのにこの前殺した奴のようにあっさりやれなかった辺り、手強そうだと評価しながら、懐から包丁を取り出した。
殺人鬼の人格コピーなんて思いもしていないあやは、ババアが何を言っているのか理解できない。
一先ずババアが追ってこれなそうな斜面を這いあがり、山に入ってから村に急いだ。

この夜、龍野に麻薬を与えられていた村民たちは痛覚が麻痺し、一揆のように動いていた。
それがVRで殺人鬼の人格を植え付けられている状態での行動ともなれば、村の未来は崩壊しかなかった。
あやは母親経由で警察に通報してもらおうと思ったが、村はあちこちから火の手が上がっており、自宅の方が燃えているのも嫌でも分かった。

まさかと思いながら走り、家の前に辿り着き、僅かな希望が絶望に変わった。
しかも家が燃えているだけじゃなく、あのレイプ犯3人が母親のバラバラ死体をもてあそび、頭部をボールにして蹴っていた。

その光景を見た瞬間、あやは発火し、これまでの人生を台無しにした村民を心底憎んでいるんだと自覚したのだった。
当然この3人も、それぞれに殺人鬼になり切っていた。
ジョン・ノーマン・コリンズ、マルセル・アンリ・バルボー、ゲイリー・アラン・ウォーカー。
ナイフ、銃、コードで武装している3人は丸腰のあやを嘲笑うが、いつの間にそこにいたのか、龍野があやの力が一番発揮できる刀を差し出した。

そして受け取り、鞘から抜いたあやは、VR修行のおかげで刀をどう扱えばいいか瞬時に理解できた。
一瞬の踏み込みで間合いを詰めると、坊主頭の頭部を横薙ぎに斬り飛ばし、銃持ちを脳天から一刀両断した。
地獄の業火に照らされて刀を振るうあやの姿は、彼岸花のように不吉で可憐だった。

最後の眼鏡は往生際悪く涙を流して恐怖し、母親を殺したのは村長で自分たちは死体で遊んだだけだと弁明するが、刀の錆にされたのは一緒だった。
まだ龍野が元凶だと知らないあやは一言告げると、一目散に村長の家に向かった。
途中、またババアが現れて襲いかかってこようとしたが、擦れ違いざまに首を刎ね飛ばされるだけだった。


































