178話
隔離地域に取り残された彼らは、らぎ姉の高層マンションに身を寄せた。
らぎ姉の命は、たった残り一日。
一人で住むには十分すぎる広さの家に住んでいるらぎ姉がくつろいでくれと言っても、ながみんは戦いたくて彼に指示を仰ぐが、一先ず3人共汚れ切った体を洗おうとなった。
先に順番を女子二人に譲った彼が、その間に食糧調達に行こうとするとらぎ姉は心配するが、今の彼が並の保菌者にやられることはまずあり得ない。
だかららぎ姉も、噛み痕が残る手をそれ以上伸ばしはしなかった。

そして車に一人で乗り込んだ彼は、らぎ姉を助けられない無力さを嘆いた。
一方、しぶとく生き続けているエリックはなんだかんだ作戦がうまくいっているのに、モヤモヤとした感情に襲われていた。
神の後を追いかけた先で、究極の生物になった轟に神城が渡り合っているのを目撃したせいだった。
凝縮された進化情報を打ち込まれた轟と戦えること自体が、神の計画に抗えている証拠であり、それはつまりあまりに特別なことだった。

他者との比較で焦燥感がこみ上げたその時、どこからともなく現れた渚にまず怪我を治してもらい、改めて神の奇跡に感動した。
そして実験が成功して上機嫌の渚に今まで手伝って来た感謝を言われ、心から身体が打ち震えた。
しかし、もう手伝ってもらう必要が無くなりどうすると訊かれると、高木はただぶらついていると聞き、透明人間の能力を与えられて特別扱いされている高木への嫉妬がこみ上げた。
貢献度は自分の方が遥かに上なのにと負の感情が膨れ上がると、渚は優しさなのかその時まで殺してあげようかと提案した。

生死さえも操れるらしい渚はそれでも、傍に居させて欲しいという願いをこれから息子に会いに行くから断った。
エリックはそれで晴輝が神にとって何者にも代えられない特別だと改めて思い知り、生きる気力を失ってやはり殺してもらおうかと思った。
神の力になれないのなら生きる意味はないと思えたが、気づけば自分もぶらついておくと答えていた。

長い時間をかけてきっちり神の任務をこなし、新たな世界になった時にはまた神のために働ける最高の未来がそこまで来ている。
なのに、神城、高木、晴輝に比べると特別扱いされていない自分への苛立ちと嫉妬が募っていく。
その時、顎が外れて片足も失った変異体と出くわした。
神の陣営で襲われる心配がないエリックは、誰かを喰って回復したくてもできない無様な変異体を蔑むと、元はどんな顔をしていたのか思い出した。

人間の時と同じ涙を流す変異体が、人間の時と同じように助けを求める滑稽さ。
エリックがこの変異体に苛立ちをぶつけた直後、言葉を理解したように更に大泣きし始めた。
あり得ない反応だったが、エリックは自分の能力が進化して言葉の意味が伝わったのかも知れないと考え、轟やながみんのような急成長に希望を抱いた。
いや、神の隣に相応しい自分は更に進化できると確信し、巨大な変異体に手をかざして俺の力になれと指示した。

すると人造人間19号が気功波を吸収するかのように、変異体を吸い込んだのだった。































