194話
空母の中で爽やかな朝を迎えた総理にさっそく、螢は保菌者騒動の近況を説明し始めた。
日本では紗月がリーダーになって素晴らしい成果を上げており、たった一晩で宮城以外の東北の安全が確保されていた。
助けられた者がより強い気持ちで誰かを助けるために動いていく雪玉作戦は面白いほどに人々を動かし、安全地帯を拡大できたのだ。

螢が見違えるほどに立派になった紗月の活躍に目を細めるが、都市圏や世界各国は厳しい状況だった。
人口密度の違いからか、被害を止めることができずに壊滅的打撃を受け、隔離地域の何倍ものスピードで保菌者が進化して新型や感染者が現れ、被害に拍車をかけていた。
自衛隊にも犠牲者が出たことから一掃作戦は断念し、ヘリでの救助活動で手一杯の状態だった。
結果、日本は人口のおよそ4分の1が死を待つのみの非常事態になっていた。

比較の意味はないが、銃で自分を守れる世界の大都市では、むしろ人種差別などの問題が過激化して保菌者以外での死者数が増加していた。
中東の戦争、内戦、人種差別、貧富の差の略奪行為など、保菌者騒動を理由に人間同士での争いの方が激しいくらいだった。
冷徹な犯人、愚かなる人類に世界滅亡さえ頭に過る総理だが、昨日教えられた3つの作戦を覚えているかと訊かれればちゃんと答えられる程度には覚えていた。
螢はその三つ目、犯人の所在についての進展から話し始めた。

結局中国から隔離地域に向けてミサイルが発射されたのだが、それは日本海上で消滅し、アメリカからの爆撃機も同様に消失したことから、空からの侵入は不可能と分かり、隔離地域に犯人が潜んでいる証拠にもなった。
ならば地上からの侵入の検証が必要だが、それは昨日大統領がわざわざ断ってくれた通り、アメリカ軍が勝手に行ってくれるのを待てばよかった。
続いて科学力の研究については、隔離地域の地下研究所で行われていた研究データをアメリカの新地下研究所に受け継がせ、大国の天才がリーダーとなって研究を続けていた。
ウィンストン・デイビス、通称ビッグは見た目だけじゃなく科学以外の知識も豊富なまさに天才だった。

そのビッグに言わせても、香里たちの研究内容も成果も短期間の少人数で挙げたものとは思えないもので、まさに革命的だという。
そして香里が解明した未知の情報エネルギーなるものを犯人より使いこなせれば、目的を達成できる。
香里には及ばなくてもビッグ率いる研究チームは万単位の人員と広大な研究設備があり、既に情報エネルギーを操る装置の開発を進めていた。
更に保菌者無力化特効薬の量産も始まっていて、大いに希望を持てる状況だった。
そして保菌者騒動対策については、紗月が助けられた者の心に火をつけたように世界で広げればよく、どう保菌者に対抗すればいいかの情報拡散が急務だった。
関東圏や北陸にも雪玉作戦が浸透して安全地帯が広がり、次々と報告を受けていた紗月だが地理の知識が全くなく、実質的な具体的指示は関がてんてこ舞い状態で頑張っていた。
紗月の仕事は関の肩もみや御茶くみになっていた。

着々と広がる救助部隊はいよいよ東京に迫っていたが、混乱と壊滅具合は今までの比じゃなく、スムーズな進行が止まりそうだった。
その時、ジャーナリスト魂が充実しているカメラマンが朗報を持ってきた。
紗月の勇姿を修めた救助作戦の動画が世界各国の字幕入りで勝手に拡散され、保菌者との戦い方も記された動画が出回っていたのだ。
そのおかげで、世界各国からお礼のコメントが寄せられていた。

シンプルで効果が高い動画で世界に情報を伝えた螢の作戦が見事にハマっている今、長兄・次兄・長女が母を殺すために力を合わせた結果が出始めていた。
感想
インフェクション192話193話194話でした。
やっぱりあんな寂しく退場させるわけにはいかなかったですよね。
何でもありな渚ですが、息子二人が揃って反抗してくるときのリアクションは楽しみです。
https://www.kuroneko0920.com/archives/73955
































