19話後編
タガメを海水に飛び込ませたのは、セミを退治した時と同じ習性を利用しただけだった。
セミと同じカメムシ目のタガメはより光に敏感で、街灯に集まり過ぎて絶滅危惧種になった地域もあるくらいだった。
しかしここの巨体サイズが暴れ回ると、コードを絡めてコンセントから抜いてしまい、陸に上がってきた。

それでも海水に浸かったダメージは相当で、放置しておいてもじきに息絶える様子だ。
睦美は三浦たちを狙い続けるタガメをどうにかするため、地団太を踏んで注意を引こうとする。
激しい音でタガメはゆっくり睦美に狙いを変えていくが、悠々と動くその様から人間を恐れている気配は一切ない。
職員を四角にプレスしたことからも、人間は恐れるに足りない餌認定しているようだった。

淡水プールに入られたら手出しできないと悟った睦美は引きつけたまま、建物の方に誘導していく。
そうしてタガメが離れた隙に、何とか溺れるか凍え死ぬ前に三浦たちを引き上げることに成功した。

肉食蟲は自分より大きな相手でも捕食できると分かっていれば躊躇なく襲いかかるし、戦闘力が拮抗している相手なら余程の空腹でもない限り、襲うことはない。
つまりそれだけの記憶を蓄積できる知能があるということで、睦美は人間が危険な生物だと刷り込む重要性を理解していた。
そのためにあえて建物内に逃げ込み、タガメが壁を粉砕してくるのを見越し、ウレタンスプレーを噴射した。

わざわざ建物内に誘導してからぶっかけたのは、忌避効果のあるガスの威力を雨で無駄にしないためだった。
前脚をモコモコにされたタガメは後ずさり、飛翔の準備を始めた。
飛ぶための準備運動で他への注意ががら空きになるのを狙っていた睦美は外に飛び出し、素早く後ろに回り込むと、エビ天みたいに尻尾に集中噴射した。
するとタガメは飛びたくても飛べなくなり、執拗なウレタン攻撃でついにひっくり返ってダウンした。

この攻撃はセミとは違い、呼吸器をウレタンで塞ぐことによって呼吸困難を起こさせたのだ。
タガメさえ退けられたが、千歳は子作りさせられている真っ最中かも知れなかった。



































