第18話 真の目的
多くの犠牲の上に生かされたこの命を無駄にはできないと、早希たちは清浄寺で再起を図ろうと歩き出す。
入り組んだ地下通路を進んでいくと、一匹のバケネズミが瀕死の状態でいるのを見つける。
身分が高いらしく人語を操れるそいつは、人間に刃向かった理由を、人間と変わらない高い知能を持つ我々が人間からの圧政から解放され、尊厳と自由を取り戻すためだと捲くし立てた。
ただ、呪力を持つか持たないかの違いだけで、人間と我々は同等の存在だと言い放つ。
その時、背後から足音が聞こえてきたと思ったら、槍が飛んできてバケネズミを仕留めた。そこにいたのは奇狼丸と鳥獣保護官の乾だった。
地獄に仏の出会いだと思えたが、二人がもたらした情報に耳を疑いたくなる。清浄寺は焼け落ちたと言うのだ。

大雀蜂はやはり悪鬼の介入で武器を取り上げられ、塩屋虻にいいように殺されてしまったらしい。
乾は塩屋虻殲滅の道すがら悪鬼に遭遇し、なすすべなく仲間は殺され、しかも近くにあった新生児の託児所でおぞましい光景を目撃していた。
バケネズミが人間の子供を略取し、額にコロニーの焼印を押していたのだ。
それを聞いて、早希はスクイーラの真の目的に気がついた。
人間の子供を奪い、バケネズミを仲間だと思うよう育て、その呪力を武器にバケネズミを生物の頂点に立たせるつもりなのだ。

悲嘆にくれる中、奇狼丸が一つの包みを早希に差し出してきた。
早希の両親から託されたという包みの中には、手紙と箱があった。
手紙には悪鬼に唯一対抗できる手段、先史文明の大量破壊兵器「サイコバスター」について記されていた。愧死機構と攻撃抑制を回避するには、殺意を感じずに攻撃しなければならない。それがサイコバスターなら可能らしい。
箱にはミノシロモドキのミニ版が入っていた。長時間の太陽光充電が必要みたいだが、情報は得られそうだった。
サイコバスターの在り処は東京港区~と書いてある。
東京はとても恐ろしい魔境だと伝えられているが、人類の勝利のためには行くしかなかった。
早希は最後になるであろう母の言葉を胸に、東京への旅立ちを決意する。

第19話 黄昏の光
東京に向かう前に動き安い服装に着替えることになり、郊外の早希の家へ寄った一行。
早希は遥香を自室へ招いた。
部屋の中は守が呪力で書いた早希と真理亜の絵がたくさん飾られていた。おそらくその絵の子と描いてくれた男の子の子供が悪鬼だと思うと打ち明け、真理亜が処分対象になってしまい守と町の外へ逃げなければならなくなったのが、全ての発端だと教える。
親友の子を殺さなければならない不幸の連鎖に胸を痛めながらも、二人が少しでも平穏な時を過ごせていたらと、知ることの出来ない過去に目を細める。
早希は遥香の様子がおかしいことに気付いていて、何か隠し事があるんじゃない?と訊いてみた。すると遥香も処分対象だと言うのだ。

遥香は全人学級への入学も遅く、呪力も上手く使えなかった。
ある日、先生に頼まれごとをして帰りが遅くなった時、不浄猫に襲われたのだ。
間一髪、翔に助けられたが、両親でさえもう遥香の処分を受け入れていて、大人は誰も頼れないと知ったのだ。
でも翔だけはずっと味方でいてくれた。そして早希を見て、守られてばかりじゃだめだと気付き、この戦いが終わっても処分しないで欲しいと打ち明けてきた。

早希は、瞬や麗子を失った頃の自分を重ねて見ていた。
あの頃の自分に大人になった今の自分が味方していたら、明るい未来があったかも知れないと。
そう思った早希は、遥香に必ず助けると約束する。
約束した直後、早希は緊張をほぐしてあげようと、遥香の体をまさぐり始めた。
まだ未経験な遥香は頬を紅潮させていく。それでも、終わる頃にはすっかり快楽に身を委ねていた。
準備が整い、外洋に繰り出した一行。
人類の存亡をかけた過酷な旅が始まろうとしていた。
感想
新世界より5巻でした。
面白度:☆7 バケネズミ度:☆8
なんだか久しぶりの百合展開でした。はっきり言ってストーリー上不必要ですが、作者的にも読者的に必須なので、楽しく読めれば問題ないですね。
自殺覚悟でも呪力で攻撃できない理由も説明され、悪鬼の正体も明かされ、攻略方法の伏線も張られました。もちろんサイコバスター以外で。
ここからは遥香を愛でる展開が増えることを願いつつ、6巻に続きます。
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