274話
栞が瑠璃子になるとはどういうことか。
元祖瑠璃子はヒゲ爺の仕事仲間の娘で、出会った当時は中一くらいの年齢なのに大学の教育を受けている天才児だった。
桐生正臣も同時期に出会い、天才の瑠璃子と交流していた。

しかし瑠璃子は性犯罪者に殺されてしまい、惨い最期を遂げてしまう。
犯人は捕まらずに桐生は酷く落ち込み、瑠璃子と約束していた世界旅行に一人でフラフラと出かけ、10年は音信不通になった。
その後、瑠璃子の母と結婚して戻ってくると、既に彼女のお腹は大きく、それが栞だった。
つまり、瑠璃子と栞は種違いの姉妹。
瑠璃子の父はその1年ほど前に亡くなったらしく、五菱に入った桐生は瞬く間に才覚を発揮して数年で二人の兄に勝るとも劣らないビジネスマンに。
その矢先、3兄弟家族で出かけた旅行先で事故を起こし、助かったのが桐生正臣と栞だけだった。

正臣の父らしく、息子家族の死よりも五菱の幹部を失った動揺、せめて一番仕事ができる三男が生き残った奇跡に安堵するほど、ヒゲ爺は仕事第一のクズだった。
そんな自戒を混ぜながらの回想はいよいよミラーニューロンに触れていく。
正臣がその話をヒゲ爺に持ちかけたのはあくまで、精神的ショックで言葉を失い足の異常はないのに歩けない歩こうとしない栞を救うという名目だった。
心の病を治す、人格を変える、他者の能力をコピーする。

夢のような技術を聞かされたヒゲ爺は孫の回復よりも、また巨万の富を築けそうなチャンスだと思い、人類史上、最も姑息で浅ましい技術に笑いを抑えられなかった。
その資金繰りのために会社経営を正臣に譲って、ヒゲ爺が出資者を募って世界を飛び回った後、息子が狂気に染まっていることをやっと思い知ることになった。
おぞましさしかない個人的な欲望。

かつて骨抜きになった少女を取り戻すため、実の娘をただの道具としか見ない悪魔的な執着心。
息子のイカレっぷりに気づいたヒゲ爺は空白の10年間を調べ、物騒な国辺りで傭兵をやっていたのを突き止め、その時期に瑠璃子への異常な欲望を発散していたらしいことを知った。
瑠璃子殺しの犯人を長年にかけて監禁し、犯人の生々しい語りをオカズにしていた異常者。
そんなことをするド変態異常者なら、瑠璃子を取り戻すために、まず生んでくれる女を手に入れるためにその夫を殺して掠め取り、依り代の栞ができれば妻と経営の邪魔になりそうな兄家族を葬るくらい、余裕でしそうだというのがヒゲ爺の推測だった。

こうして桐生の異常さを改めて聞かされたメデューサたちだが、これからも無罪を勝ち取れる流れの中でもう私怨の復讐で命は懸けられないし、そもそも桐生は総がかりでいっても返り討ちにされた強さも鬼畜レベル。
どうにかこうにか勝てたらスッキリするくらいの戦いに誰も参加などするはずがないと思われたが、小夜子がいの一番に手を挙げたのだった。



































