萌愛の母はすっかり腑抜けになった勝浦の部屋に足繁く通い続けていた。
飲んだくれて悪魔の見る影もないうらぶれた中年男にも愛想を尽かさず、むしろダメ男になればなるほど慈愛に満ちた表情を向け、ワインを催促されると相手の健康は気遣わずにすぐにグラスに注ぐ。

相手の願いを聞き入れることが全て愛であるかのように、優しい言葉で酒を差し出した。
母が悪魔に入れあげてしまっている萌愛は、マンション内のプールで凛と一緒に泳いでいた。
凛は復讐のためには体力も必要だと考えているのか、素晴らしいフォームで壁を蹴ってターンする。
すると、同じ年頃で競泳水着を着込んだ女の子が横に飛び込んできて、凛をあっという間に追い抜いていった。
直後に「実花」と怒鳴り声が響き渡り、萌愛は肩をびくっと震わせた。

実花と呼ばれた少女は大人しくプールサイドに上がり、ゴーグルを取って凛にまたねと声をかけた。
このマンションに住んでいるという実花は、楽しみを邪魔されたせめてもの意趣返しに、怒鳴り声で呼びつける女のサングラスの下は不細工なのだと囁いた。

すると女は容赦なく実花を蹴り倒した。
小さな体が吹き飛び、凛はさすがにやり過ぎだと思い咎めようとした。
しかし女はそのまま強気な態度を凛に移行させ、クソガキと呼んで黙らせようとするが、同じく気の強い凛もルールを盾に言い返した。

結局実花は連れて行かれ、親子かどうかも分からない二人との出会いはモヤモヤしたまま終わった。
蜜は大きなお腹を擦りながら、同じマンションの最上階に我が子が住んでいると伝えられた。
灯台下暗しな場所にいたことは本当に偶然で、しかしそれも、高いところが好きな自分との共通点と思えば、妙におかしさがこみ上げた。




































