ルイが旅立って一カ月、夏生は早まった締め切り前に何とか原稿を完成させ、編集からも期待の言葉をかけてもらい、テンションが上がって通常時の表情がニヤけてしょうがなかった。
バイト中にもニヤけていると、原稿完成を報告されたヒナが駆けつけ、人目も憚らず抱きついて我が事のように喜び始めた。
そこに偶然出くわした雅たち。
近親相姦みたいに勘ぐっていた雅は、明るく美人で朗らかなヒナの笑顔の挨拶も、素直に受け取れずにいた。

でも、やっぱり夏生の言葉一つ、表情一つで心が浮き立って仕方なかった。
学際公演の打ち上げがお開きになり、早々と帰ろうとする夏生を追いかけた雅は、二人きりになったタイミングで思い切って訊いてみた。
あのショートカットの彼女って、兄妹なのか?と。
襲われた女性はルイの姉。
夏生が庇った女性は彼の姉。
じゃあ、夏生が近親相姦していると考えるのは必然だった。
だから夏生は、親同士の再婚でできた義理の姉妹だと明かしつつ、それでも愛してしまったのだと打ち明けるしかなかった。
二人だけの秘密にしてくれと言われた雅はキュンとして舞い上がってしまう。
しかし、姉のヒナとも一時期付き合っていたと分かるや、もうケダモノにしか見えなくなってしまうのだった。

一方、日々の仕事に疲れながらも充実した日々を送っていたルイは、ハウスメイトのダニエラとも仲良くやっていたが、彼氏を連れ込まれた時に外で時間を潰さなければならない時は、羨ましいやらめんどくさいやらだった。
そんな風に時間をもてあましたタイミングで、同じく暇していた同僚の梶田と少し距離が縮まった。
まさかルイの近くに同年代の日本人の男がいると思っていなかった夏生が嫉妬に襲われた矢先、彼の新作は意図しない形で売り出されることが決定した。
姉のストーカー被害に巻き込まれて殺されかけた青年が書く、罪についての一作。
そんな煽り文句をつけられた、イロモノ作品にされてしまうのだった。
そんなことになっているなんて知る由もなく、夏生はルイへの不安をラマンで愚痴り、そこにヒナも顔を出して飲み耽り、彼女はあえなく店を出る頃には千鳥足。
二人が共に楽しみにしているのは新作発売で、かつて浴衣お祭りデートをした神社にヒット祈願で立ち寄った。
ヒナはやはり神様の前では彼との復縁を望んでいる気持ちを隠しきれず、彼の思わぬ言葉に期待が止まらなくなっていく。
だが、繁みから物音が聞こえた瞬間、襲われた時の恐怖がぶり返して反射的に飛びのいて彼に抱き着き、呼吸が荒くなっていく。

まだ全然心の傷が癒えていないと思い知った夏生は、自然とヒナの肩に手を置いて言葉をかけ、助けになりたいと申し出た。
ヒナはまた彼への気持ちまでぶり返したが、お腹の傷痕に触れさせてもらって、彼が生きているだけで十分な幸せを感じなければならないと言い聞かせた。
それは確かに本心でもあったが、シャワーを浴びてさっぱりすると、守ると誓った夏生に守られたい気持ちが否定できなかった。

そして雅がビッチの葛岡に恋愛相談し、季節が冬に入ろうとしていた時、夏生は自分の小説が話題性を先行させていやらしく売り出されていることを、ネットの炎上で知った。
すぐに編集の蔦屋に連絡すると、なんと出版社が流した情報だと言われ、重版決定だなんだと言われても怒りが治まらなかった。
ヒナを始め、近しい人も怒りを露わにしてくれたのが救いだったが、やはりモラルのないネットの中は誹謗中傷が跋扈し始めた。
それでも、文学としてちゃんと評価しているレビューもあるにはあった。
そして、雅が直接言ってくれた高評価が、誰の励ましよりも嬉しかった。

雅もまた、夏生の笑顔を見てあっさり惚れ直してしまった。
ただ一人、遠くにいるルイは夏生が心配で堪らず、ヒナに気分転換をしてあげて欲しいと頼んだ。
同じく何かして励まそうと考えていたヒナは、海も山もある場所に家族旅行へ連れ出した。
しかし、宿に着くなり母の職場でトラブルが起こり、父と二人でとんぼ帰りしなければならなくなり、期せずして夏生と二人きりの一夜を過ごすことになった。
夏生もヒナも、ルイを悲しませないために間違いを起こすまいと強く思った。
ヒナはあえて外に飲みに行って距離を置く作戦に出たが、旅先の開放感と緊張からの解放で飲み過ぎてしまう。
だから、間違えて夏生の寝室に入ったのも気づかず、半裸でベッドに倒れ込んだのだった。




































