彼もいい雰囲気を察しているのかいないのか、更に進んでいくとカエルの置物の口の中に玉を入れる出し物が賑わっていた。
熱くなって挑戦しているのは知り合いの若い冒険者たちで、彼をおっさん呼ばわりして牛飼娘とのデートを茶化してくるので、彼はまだ二十歳だと明かして驚かせた。

まだ誰も玉入れを成功させていないらしく、どんどん熱くなっていく男子陣に女子たちは呆れ気味。
牛飼娘は彼が万能ないい男なのを知らしめたい気持ちで手本を見せてあげてと頼み、彼もやぶさかでなく受け入れた。
牛飼娘の記憶通り、コントロールが抜群にいい彼は兜を被ったまま次々と口の中に入れ、残りの数個を少年に渡す粋な計らいまで見せた。
彼に向けられる歓声を傍で聞いた牛飼娘は、我が事のように誇らしくなった。

彼は成功した分の成功報酬のレモネードを後輩冒険者たちと牛飼娘に振舞い、玉入れは練習あるのみだとアドバイスして颯爽とその場を後にした。
牛飼娘はレモネードを流し込んで喉を潤してから、勇気を振り絞ってさりげなく指輪をつけて欲しいとお願いした。

彼はいつもの調子でどの指に?と訊き返す。
そこまで考えていなかった牛飼娘は心臓が弾むが、薬指にと搾り出す。
すると今度はどっちの?と訊かれ、牛飼娘は今日一番に顔を真っ赤にして一歩踏み出せず、右手を出した。
しかし、彼が薬指に嵌めてくれた指輪は光輝いて見え、今日一番の恥ずかしさを感じた後で、今日一番の嬉しさを感じたのだった。

その辺りで午前デートの終わりが近づき、牛飼娘が受付嬢によろしく伝えるよう言っているのを、通りが見渡せる店の席にいたエルフはしっかり聞き耳を立てて聞いていた。
するとエルフが塞ぎ込んだ表情を見せるので、ドワーフは彼女まで恋の戦いに名乗り出るかと思って焦った。

しかし、エルフは玉入れで一つも入れられなかった悔しさがぶり返しているだけだった。



































