2話
あの時と同じように桜舞い散る中、夜風サクラと思しき美少女と遭遇した両国アツシ。
少女の数値はまさに普段見ている数とは桁違いに高く、どんな行動を起こすほどの好意なのか見当もつかない。
15年、やっとこの日が来たと言いながら少女は微笑むが、彼の記憶では、養護施設の隣に住んでいた夜風サクラとはよく遊び、夜桜を見に行った帰りに事故に遭って意識が戻らなくなったはずだった。
だが少女は、サクラなのか訊かれて肯定した。
本物の夜風サクラとしてどうしてエミを知っているのか問い質しても、サクラはすぐに話しを変え、少女のまま頭の中が成長していないのか、彼の部屋で雑誌の付録の婚姻届を書きに行こうと言い出した。

更に、既に彼の部屋に入ったことを何事もなく事後報告した。
洗濯かごに入れられていた使用済みのパンツを手洗いしたと言い、果てのない愛情を抱いていることをトリップした顔でぶちまけた。

さすがの彼も異常過ぎるサクラに引き、逃げた。
ユメノに頼んで鍵の交換、覚えのない約束、そしてエミが気がかりで全力で走り続けた。
15年ぶりに再会できたのに逃げられたサクラはただ、婚姻届をしっかり掴みながら彼の背中を見つめていた。
エミから連絡が来ないまま、記憶を頼りにマンションの部屋に着いた彼はチャイムを鳴らすが応答はない。
彼は覚悟してドアノブを掴むと、普通にドアが開いた。
女の一人暮らしの不用心を注意しながら薄暗い廊下を進んでいくと、すぐにエミが風呂場で手首を切ろうとしているのを発見することができた。

既に血が出ているが深くはなく、彼が止めに入ったが、エミはインスタが、死ぬと泣き叫び、完全に平静を失っている。
彼は取りあえずエミが死を選ぶほどの原因を確かめようとして驚愕した。
エミはあそこをくぱっと開いて見せつけた全裸の自撮り写真をアップしていたのだ。

エミは撮った覚えはないし、裏アカウントで自分のスマホからしか更新できないはずだと捲し立てる。
彼はこれがサクラの言っていた言葉の意味かもと思ったが、どうやってこんな写真を手に入れてエミのインスタを更新したのか謎が残る。
そして閲覧して騒いでいる連中は見事に、大学の人間ばかりだった。
ともかく、過去に死を願われた身として身につまされる物があった彼は、嫌な物から目を背け、行きたくない場所にはいかず、会いたくない奴には会わなければいいと励まし、死ぬことから目を逸らさせようとした。

翌日、当然大学中でエミのエロ自撮りが話題にされていた。
彼は犯人捜しのために、自分に高い好意を寄せている日焼けギャルにエミについて訊ねてから、数値の変化に注視した。
音楽や言葉が対象になった場合の好意の変化は耳を見れば分かり、エミについて訊かれた時のギャルの変化は一瞬で陰口を叩くレベルのマイナスにまで下がった。

つまり、黒ギャルも例の自撮り写真をネタに騒いでいる一人なことが分かった。
エミの裏アカウントが本人のモノだとバレて大学内で集中的に広まっているなら、彼女の本当のキャラを知っている学内の誰かが拡散させた可能性が高い。
そう推理した彼が手当たり次第に怪しい人間に当たり始めてしばらく、エミに対する悪意のレベルが実際に行動に移すほどの数値を示している連中に行き当たった。
見るからに底意地が悪そうな女子3人組は、ミスコンでエミに負けた連中だった。

ミスコンに出場するほど容姿に自信があっても、内面は気に入らない相手の人生を壊して笑っている真っ黒な人間。
ほぼ確信を得た彼が裏アカの拡散について問い質すと、彼に対しての好意も悪意レベルに変わったことから、図星を突かれて動揺したことが分かった。
だから彼は、マインド=アイで収集した情報を使い、彼女たちが教授と肉体関係を持って単位を稼いでいるだろうことを脅しのネタにした。

はっきりと言葉にしなくてもあっさり自白した彼女たちに、局部を隠してもいいから自撮りのエロ写真を撮ってインスタにアップしろと要求した。
それで、インスタを乗っ取ってコラ画像を上げる変態がいると騒げば、必然、エミの自撮りもその被害の一つと思われる。
そうすれば、教授との関係を暴露しないと持ち掛けた。
コラ画像を拡散させる変態の被害者になった噂か、教授と関係を持っていた噂か。
結局彼女たちはエロ自撮りの方を選んだが、エミの写真は元々知っていた裏アカからただ拡散しただけだという。
そしてエミの乳房にほくろがあるのを知っている彼は、あれがコラ画像じゃないことを分かっていた。

なら、本人に記憶がないのにどうやってあんな写真を撮ったのかが分からない。
そう思った直後、今度はるるなから変な女がマンションの外にいるという連絡が届いた。
またサクラかと思った彼は住所を送ってもらい、すぐに駆け付けたが、週刊誌らしき人間もサクラも見当たらなかった。
るるなは彼が来たことが嬉しくてまるで危機感がなく、スキャンダル発覚からの結婚を望み、可愛い着ぐるみの部屋着姿で彼を歓迎した。
ただ、知らされていないもう一人がいるのには戸惑った。
一人で来たはずの彼は一瞬意味が理解できず、横を見た。
すると数m先に、まだ異常な数値を示しているサクラがぼうっと立っていたのだった。
彼はすぐにるるなを部屋の中に押し込んだが、それより早くサクラはるるなの目を見つめていた。
同じく異常な好意の数値に跳ね上がったるるなは急に服を脱いで裸になり、サクラと同じように笑った。




































