22話
プロポーズの答えを待っている真っ最中にも関わらず、所変わって電車内。
立ち客もそこそこいる込み具合の中、今日の現場に向かっていた星は隣に立っているセーラー服の女学生の尻にさり気なく手を伸ばした。
本当に微かに触れるくらいの絶妙な痴漢行為。
しかし、やり過ぎたせいで女学生に指を掴まれてついに阻止された。

ぷっくりとした唇に薄い眉、パッツン前髪の女学生は、清楚には見えないその見た目にある意味似合う汚い言葉遣いで星の中途半端が余計気持ち悪い痴漢行為を咎めた。
当然性根が腐っている星は、冤罪だ冤罪だと喚き出した。
だから女学生は顔色一つ変えずに星の指をへし折り、警察に突き出さない代わりの制裁を与えたのだった。
そしてラブホでくんずほぐれつしかけている千秋とマリコ。
醜態を晒す彼女に圧し掛かった彼は突然のプロポーズをぶち込み、どこにも行かないでと続けた。
勢い任せにぶち込んだ千秋と、突然プロポーズされて理解が追いつかないマリコの視線がぴったりと重なる。

何かを言わなければこのまま唇が近づいていくこと必至な雰囲気になったその時、またしても突然に部屋の電話が鳴り響き、ラブホらしいドキドキの雰囲気の緊張は一気にほぐされた。
取りあえず千秋が出てみると、フロントから時間が来たことを告げられたのだった。
今日の千秋の衣装はナースだった。
完全なる只野の趣味だとはまだ気づかないまま、バッチリ似合っているナース姿で待ち合わせ場所にいた千秋は、酔いに任せてぶち込んだプロポーズに後悔したりしなかったりで頭を抱えた。
マリコへの気持ちはもう否定せず、結婚したい気持ちも本物だと思えたが、あまりに早すぎたプロポーズ。
弟たちをタワマンに住ませる夢の実現もまだまだ遠く、そもそもマリコがタワマンに住んでいる格差。
極めつけは、帰りに蕎麦を一緒に食って帰った意味の分からない選択をしたことだった。

千秋が悶々と考えている頃、マリコもタワマンの最上階でコンクリートジャングルを眺めながら、どんな顔で彼と会えばいいのかと思い、震えていた。
あまりのパニックでプロポーズされた帰りに蕎麦屋に誘ったのはもう仕方ないとして、千秋に女として見られていた事実、フロントからの電話がなかった場合の未来を考えると、何とも妄想が膨らんでいく。

千秋が本気でプロポーズしてくれたのは間違いないと思えても、蕎麦屋に誘ったのは仕方ないと思えても、蕎麦にコロッケを乗せた愚行は悔やまれるマリコだった。
一方千秋は、いつまで経っても来ない星にイラつき始めていた。
そもそも星がチラシ運搬係なのだから、来てもらわないと千秋たちは変な二人と犬一匹の不審者がいつまでもたむろしているようにしか見えない。
コバーンは何言ってるか分からないし、ぽっさんは犬。
リーダーとして決定権を発動した千秋は、今日はここまでで解散を指示した。
ともあれ、星がすっぽかしてくれた助かったのは、ずっと動揺しっぱなしの千秋で、とてもこんな似合い過ぎるナース服でポスティングなんてやれる気分じゃなかった。
自分で言い出しておいて結婚という人生の重大イベントに想いを馳せながら、ナース服のままとぼとぼ歩いてアパートまで帰り着くと、どうやら新入居者がいるらしく引っ越し作業をしていた。
千秋が階段を上がろうとしたタイミングで声をかけてきたのが、リアルな猫顔プリントのパンツを履き、星の欲望を掻き立て指をへし折った女学生の美保野純で、今日からお隣さんになるようだった。

そして看護婦なのかと訊かれた千秋はようやく、自分がコスプレしっ放しだったのに気づき、尋常ではない大声で驚いた。
急に大声を出された純は痴漢を撃退するメンタルでも普通に驚き、足を踏み外してしまった。
ちょうどトラックも停まっているし、某先生の作品ならこの後バラバラになって大爆発する展開。
そうはならず、美少女の転落に巻き込まれた美青年は命の恩人とばかりに彼女のクッションになって絡み合った。
体勢は69。
千秋が下で上が純の正統派体位。
そして大怪我から免れた純は、衝撃で飛び出した千秋のイチモツをまさに眼前で目撃したのだった。

感想
ロウヒーロー20話21話22話でした。
訴えたら余裕で勝てそうな事案に思えますが、証拠が被害者の言葉しかないセクハラ案件は、痴漢冤罪と変わらない怖さがありますね。
果たしてマリコは、星を仕留めそこなったあの巨乳ヒーローなのか…
純は単なる気の強い一般人なのか…
https://www.kuroneko0920.com/archives/62938



































