棍棒のカウンターもあっさり避けられると、彼は相手が使う攻撃方法から相当に高位にいる実力者だと判断したが、ダメージは見た目ほど大きくなく、毒が塗っていないのも理解した。
十分に実力差を示したと思ったダークエルフはしかし、ゴブリン以下だと言われた怒りが治まらず、呪物の左手を嵐の空に掲げ、その力を身に宿す祝詞を叫んだ。

直後、落雷が落ちたように激しい衝撃に包まれたダークエルフが絶叫した。
おぞましい声を放つダークエルフの背中から何本も巨大な腕が飛び出し、突然変異種の蜘蛛のような恐ろしい姿に変貌。
一本一本がダークエルフと同じくらい大きな手は、本人の身体を支えて足代わりにもなっていた。
エルフが怖気をふるう異形の姿は、ドワーフも初めて見るものだった。

しかしリザードマンは彼の経験値があれば恐れるに足りずと見なし、勝利を信じて疑わなかった。
巨大な手によるシンプルな打撃を躱していく彼はうまく懐に潜り込み、本体の急所に叩きつけようとするが、元々身のこなしが軽いダークエルフは生えた腕を使い、容易く躱し返す。
リーチの短い棍棒では、どうしても深く距離を詰めなければまるで届かない。
逆にエルフは、大きくなったなら狙いやすくなっただけだとほくそ笑み、悠々と矢を射った。
嵐を突き抜けた矢はダークエルフの頭部に真っすぐ飛んでいったが、ギリギリで新たな腕が出現し、矢を捕まえ握り折った。
それはアーチャーにとって致命的な矢避けの加護だった。

詠唱もなしに加護を付与したことで、ドワーフは手に持っているおぞましい左手が触媒になっているんだと気づいた。
エルフはかつて、矢をことごとく防がれたという話を祖父から聞いたのを思い出した。

エルフの祖父ともなれば神代の頃。
いよいよダークエルフがどれだけ恐ろしい力を手に入れたのか理解できた。
しかし彼は潔く棍棒を捨てると武器を剣に変え、現在の実力で敵わなくとも殺すつもりだと宣言した。




































