12話前編
同棲。
愛し合うカップルが共に住み、キャッキャウフフな甘い生活なのが一般的なイメージで、アツシもそんな楽しい生活なのだろうと思っていた。
しかしサクラとの同棲初日は、圧倒的な緊張感に襲われていつの間にか眠りに落ち、目覚めればサクラの最高の笑顔が最初に視界に飛び込んだ。

一晩寝ていなくても彼の顔を楽しそうに見ていたサクラは、家の中にあった他の女の下着を探し出すのに一晩かけていた。
起き抜けの彼は目の前で切り裂かれていく下着と、なぜこんなものがあるのかという詰問に生きた心地がしなくなっていく。
ご褒美を欲しがるサクラとの結婚を逃れるために、彼から申し出た同棲。
しかし早々に、剣呑な空気で縞パンを目の前に突き出された。

彼はビビりながらも、もうフッた女のものだと切り返し、捨ててくれてありがとうと感謝で応えた。
自分のことを分かってくれると褒められたサクラは瞬く間に有頂天になり、彼の胸に飛び込むが、密着していても二人の感情は正反対だった。
ともあれ一気に目が覚めた彼は、サクラが3億円事件でどんな挽回をしたのか、改めて話を聞くことにした。
サクラは留置所に忍び込んで、意識を乗っ取られただけの現金輸送車の運転手を逃がそうとしたのだが、その行動にも罪悪感を感じていなかった。

だが結局、その無謀な侵入で山之内に見つかり、彼を巻き込んで疑われる事態になったのだった。
そこを責めているように聞こえないよう、言葉を選びつつ行動を制限するために、彼は今後は相談を忘れないで欲しいと頼んだ。
サクラがどんな反応をするか全く読めなかったが、彼の頼みにはやはり素直に応じてくれた。
ともかく異常な数値以外は全くサクラの心を読めない彼は、大人しく留守番だけを言いつけて用事を済ませるために出かけた。
用事は手懐けることに成功した山之内からの情報入手だった。
悪意どころかどうにかうまく取り入ろうと考えているほど、山之内は彼に好意的な数値を示しており、現在の捜査状況では彼に疑いの目は向けられていないという。
どうやらストックホルム症候群になっているのか、今の山之内の心理状態は彼にとって好都合だった。
それでも、エミに酷いことをした贖罪のためだと念を押し、裏切りを牽制しておいた。

エミはサクラに意識を乗っ取られた影響もあってか、山之内に襲われた際の記憶がはっきりしていないようだった。
だから彼は信用を失っている今、顔を合わせない方がいいと判断し、手紙で大まかな状況だけを伝えていた。

エミに堂々と会えるのは、事件に関係ないことを証明して金を返した後だった。
そのために、第4の事件で起きた放火殺人の進捗状況を確かめることにした。



































