166話
きららたちが襲撃されたのが伝わらないまま、バスは次々と走り出した。
少しずつ乗り込んでいく精鋭部隊はまだ道の駅に残っている晴輝たちの無事を願い、手を組んで祈った。
道の駅には今、メットをも凌駕する恐ろしい変異体が出現し、晴輝たちと対峙していた。

巨大な鬼のような変異体は動きも機敏で、確固たる殺意を持って格闘家のように向かってくる、かつてない強敵だった。
しかし晴輝は冷静に動きを見極め、らぎ姉に指示をして援護射撃で片目を潰してもらうと、続けて精鋭部隊に同じ箇所を一点集中で斉射させていく。

変異体が止む無く防御に回って動きを止めれば、轟が足首を砕き、ながみんが尻尾を切り裂いてじわじわと削っていく。
そしてまた動きを見極めた彼は、反撃を受けないように轟とながみんに距離を取らせた。
変異体の暴れっぷりは凄まじく、精鋭部隊はまるで勝てるビジョンが見えずに慄いていたが、彼の冷静さは異常な程で、顔色一つ変えないまま淡々と敵の動きに対処して反撃を繰り出していく。
そして自分に注意を向かせ、負けじと気合の雄叫びを上げた。

トラックが突っ込んでくるようなストレートにも臆せず立ち向かった彼は、完全に人を越えた動きで躱しつつ飛び上がり、変異体の頭上を取った。
もう少しで隔離地域の外に出れるという希望で自らを奮い立たせ、もう片方の目も破壊し、勝負をキメた。
そしてとどめを任されたながみんは、これでもかと嬉しそうに表情を綻ばせた。

ヒーローごっこをするように楽しんだながみんの薙刀で、メット以上と目された変異体は倒されたのだった。
脱出を控えているのは、バス10台分の500人。
完全脱出が目に見えるところまできたのを知った彼は、ここにきて焦りを募らせらぎ姉に連絡を取ると、先にバイクで脱出しろと指示した。
しかしらぎ姉は冷静に深呼吸をさせると、先に行くわけがないだろうと諭し、落ち着かせた。
紗月、きらら、らぎ姉。
彼女候補3人を先に逃がすことを最優先目標にしている彼の焦りが嫌でも伝わったらぎ姉は、このままでいけばゴールにたどり着けると励ました。
そして、その時まで支えると請け負った。

冷静さを取り戻した彼は仲間たちに声をかけて鼓舞し、着々と発射していくバスを見送った。
その様子を、エリックはぶつぶつ呟きながら眺めていた。































