167話
残りバスが10台を切り、避難民たちの士気は一層上がっていく。
轟は改めて倒した特大変異体を観察し、元の人間のサイズと比較して質量保存の法則を無視した大きさに疑問を抱いた。
晴輝によれば、香里の情報エネルギーの法則ならあり得ないこともなく、元の肉体の大きさと情報量の多さに隔たりがあっても、変異後の情報量に合わせて足りない肉体の分は一瞬でどこからか補われるという。
とにかく現代科学では解明できないことだけがはっきりしていて、いよいよ最後のバスが出発する時が来た。

最後のグループが歓喜に湧いたのも束の間、乗り込もうとした一人が最後の最後に異変を来し始めてしまう。
素早くバスを出発させて程なく、最後の変異体が完全に姿を変え、その全容を表した。
隔離地域脱出直前、最後にそれを阻もうとするのはパワーとスピードを過去最高に持っていそうなゴリラタイプだった。

変異体は驚くべきスピードで彼と轟の間を走り抜けると、変異体の死骸をあっという間に食い尽くし、まず自分の能力を上げた。
勝ちに徹する行動をされても彼は冷静に、もう脱出できると信じてきららと出会ってからの日々を思い返した。

ながみんの斬り込みを躱した変異体は、らぎ姉の狙撃にも気づいてガードし、今までにない隙の無さを披露していく。
急に一段レベルが上がったような戦いをされても彼は冷静に指示を出しながら、人の悪意や弱さに出会ってきたことも思い出した。

そんな振り返りを嘲笑うように、変異体は隊員の一斉掃射を気にもせず、ながみんの追撃も無視し、まず頭数を減らすために弱い隊員たちを狙って襲いかかった。
人を容易く肉塊にする薙ぎ払いが隊員たちの目の前まで迫ったその時、ここで絶頂期を迎えている轟が追いつき、変異体の巨体を投げ飛ばした。

そして3人は一斉に襲いかかった。
前から横から後ろから、相手が対応しきれないように攻撃を繰り出し、四肢を削り、簡単に止めを刺せるようにしていく。
仕上げに彼がながみんを頭上まで引き上げ、彼女のために一番おいしいところをプレゼントしてあげた。

戦いの最中は最初から最後まで笑顔のながみんは、踊るように首を落として決着をつけた。
これで最後の変異体を倒し、脱出を残すのみとなった。
これで最後、これで終わり。
ながみんだけが戦い足りない風な顔をしているが、冷静に状況を見た彼はさすがに口元が緩むのを止められず、ここまで残って戦った皆に向けて、脱出だと声をかけようとした。
しかし、何者かの拍手で声が遮られた。

確かに祝福すべき状況までこぎつけたが、拍手をしているのは彼らをここまで追い込んた犯人そのものだった。
形しか分からない黒い影として現れた犯人は、彼らの計画通りの健闘に拍手を送り、エリックに笑顔を取り戻させた。
感想
インフェクション165話166話167話でした。
犯人が香里側にも仕掛けたんでしょうが、天変地異レベルじゃあもうどうしようもないでしょうね。
明石をぶっ飛ばしたのは、果たして変異体を逆に取り込んだ神城なのか…
https://www.kuroneko0920.com/archives/67759































