19話
人気アイドルプロデューサーの死は盛大に弔われ、各界に衝撃を走らせた。
るるなもインタビューに涙声で答え、早急な犯人逮捕を望んだ。
メディアも視聴率第一で視聴者の正義感を煽り、権力でもって犯人に仕立て上げられた男を晒し上げ、どんどん追い詰めていた。

その頃、彼は静岡県に潜伏していた。
全国指名手配という危機的状況で空腹はどうしようもなく、一か八かで食料調達を試みたが店主にバレ、通報され、いつ捕まってもおかしくない状況になっていた。
このままでは、楽園を形成してくれていた3人の信頼も失われてしまう。

所持金は残り僅か。
移動手段に監視カメラがある電車や顔を見られるタクシーなどもっての外。
暗いビルの隙間を縫うように進み、一先ず西へ向かうが、まずは空腹を満たし、その後少しでもゆっくり寝れる場所を見つけたい。
その時、コンビニの店員が廃棄弁当をゴミ箱に捨てるところに遭遇できたが、事もあろうにご丁寧に水をぶっかけてしっかり後始末をされた。
それでも彼は比較的水がかかっていない一つを見つけ、背に腹は変えられずに残飯をかき込んでいった。
エミは恥ずかしそうに手料理を振舞ってくれ、ユメノは豪勢なご馳走を振舞ってくれ、るるなは失敗も気にせず歪なケーキを振舞ってくれた。
彼は、それらの好意がどれだけかけがえのないことだったのか思い知りながら、冷めた弁当を完食した。

取りあえず自分に関連しそうな場所を避け、人目がないのを確かめると線路内に踏み込み、改札を通らずにホームに入ると、何食わぬ顔で電車に乗り込んだ。
田舎の駅のおかげで無事に西へ向かう箱に乗り込むと、改めてマイナスの感情を向けられる恐怖を思い出し、だからこそ好意しか向けられない3人に囲まれた楽園の素晴らしさを思い出した。

その時、発車ギリギリで飛び乗ってきた若者たちが、車内モニターに流れたニュースに騒ぎ出した。
彼は自分のニュースが流れたのを見て帽子を目深にするが、るるなとの関係が報道されていることを知ってしまった。

厳密に彼は殺人を犯していないし、るるなも容疑をかけられてからの彼に接触していない。
そんなことは関係なく、メディアに踊らされる彼らは自分に関わりがあろうがなかろうが、瞬時にるるなへ悪意を抱いたのだった。
こんな事件に関与しているような報道をされては、人気商売のアイドルなんて続けられるはずがない。
ともすれば、警察はるるなの罪も捏造する可能性がある。
健気に赤澤と会えるよう取り計らってくれたるるなが、謂れなき誹謗中傷を受けて、犯罪者に仕立て上げられるかも知れない。

それを放置できなかった彼は、次の駅に着くなり電車を飛び降りた。



































