115話
ナクタがまさかの起死回生の情報を教えてくれた。
アルスレイヤには人の記憶を司る魔女が住んでおり、仕事の報酬に人の脳を所望する偏食家だという。
果たして記憶を取り戻せるのか確かなことではないが、これは大きな希望で彼は興奮した。

彼はアルスレイヤの場所も訊くが、さすがのナクタもそこまで丁寧に教えはせず、情報提供を打ち切った。
それでも十分な彼はちゃんとありがとうと伝え、善は急げと走ってガーディアンズに伝えに戻ったのだった。
また一人になったナクタは手つかずの飯を放り投げ、敵に与した自分の甘さを呪った。

快楽を教えられたナクタは、彼の喜ぶ顔が見たい欲求に勝てなかったのだった。
新たな魔女の存在を伝えられたガーディアンズは、街の一守護者でしかないからか、ナクタほど詳細な情報を知らず、人の脳を喰らう魔女がいるらしいと噂程度に知っているだけだった。
ナクタが真実を言っているのかどうかは、現地で本人に会わないと分からなくなった。
そして肝心のアルスレイヤは、サンドリオからパイコーンで駆けておよそ三日の距離にある北部の街だった。
彼の神妙な面持ちに誰もがこれは向かう気だと察し、カヅチはアルスレイヤは国母直轄地で、入ることも容易くはないだろうと忠告した。
それでも覚悟が変わらない彼が仁科と二人でも行ってくると言うと、ルーミが本妻よろしく自分も道案内も兼ねてついて行くと切り出した。

最早ルーミの人生は彼無しでは成り立たなかった。
忠誠を誓うべき国母に盾突くことになろうとも、快楽を越えて愛で行動を決めるようになっていた。

そんな健気で可愛くてエロいルーミを、彼も死なすつもりはなかった。
そしてカヅチたちが申し訳なく思わないよう、サンドリオを守る役目を優先させるよう声をかけた。
続いて仁科に会いに行くと、ペコに見守られながら腹筋でリハビリ筋トレをしている真っ最中だった。
ここまでマンツーマンで接してきたペコの印象は、とても嫉妬深い神とは思えない怯える女の子でしかない状況。

彼は一先ずペコを休憩に行かせて二人きりになると、世間話のトーンで体調、記憶について訊ねた。
仁科はよそよそしく敬語で、相変わらず彼のことも何も思い出せず、気づいたらここだったという。
それは置いといて、彼は記憶を取り戻す当てがあるのを伝え、一緒に行こうと持ちかけた。
俺たちは幼馴染みでずっと一緒にいて高校からはちょっと疎遠でと、関係性をざっくり説明し、記憶を取り戻してあげたい熱意を込めた。
しかし仁科は、このままでいいと断ったのだ。
記憶がない不安こそ認めるが、思い出してはいけないことが記憶にはある事だけは認識し、辛い事か悲しい事か、その何かを思い出すのが怖いという。

だから、幼馴染みだと名乗る彼に、代わりに一緒に楽しい思い出を作っていって欲しいとおねだりしたのだった。
感想
パラレルパラダイス113話114話115話でした。
確かに寝ている側は何時間寝ても、目覚める時は一瞬のように感じますが、三千年は記憶がおかしくなっても無理からぬことでしょうね。
もしかしたら仁科は、かつて普通にいた男たちに犯されて絶望して絶滅させ、助けてくれなかった女に呪いをかけたのかも知れませんね。
https://www.kuroneko0920.com/archives/68555
































